野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

リーズリーダー本番

カナとザウルスが日本に帰って行ったので、これで日本語を話す人がいなくなった。昨日まではイギリスにいるけど、英語で話したり日本語で話したり、という生活だったが、今日からしばらくは日本語を話すことはないだろう。
10月1日〜5日の過ごし方をアレンジ中。ここは、当初はカナちゃんとスコットランドかどこかに行ってのんびり過ごそうと思っていたが、彼女が紙芝居プロジェクトの準備で忙しいので、先に帰国。ぼく一人で過ごすことになった。4日は、作曲家のAndrew Melvinとハーモニカ奏者の小林史真さんを訪ねることにした。Andrewは昨年から、作曲と即興の関係についてPhD(博士課程)の研究をしに大学院に通い出した。彼の指導教授の作曲家Peter Wiegoldと4日の日に会うアポをとってくれた。
10月10日に出国するけど、その前日の9日に、セージゲート(ニューカッスルの近く)の新しいコンサートホールで、クセナキスなどの演奏を聴きに行くことにしたら、そこでワークショップなどを企画している人とのミーティングを持つことになった。このコンサートホールが、来年秋のホエールトーン・オペラの会場の候補地なので、一度下見を兼ねて行ってみようと思う。
さてさて、Leeds Liederの本番。ウエストヨークシャープレイハウスで4つの小学校の子どもたちの作った歌が演奏される。ぼくは伴奏者として行く。でも、普通の伴奏者と違って、感想の部分でもっとこんな感じでやって欲しい、などなどの子どものアイディアに従ってアレンジして伴奏する。4つの小学校の子どもたちとのリハーサルはリハーサル室で。子ども達は、他の学校の子どもと一緒でかなり緊張している。練習の最後にコメント。
「ぼくが人前で演奏する時は、完璧にやろうとすると緊張するから、1、2箇所失敗してもいいから、思いっきり楽しんで演奏するように心がけている。もっとリラックスして、ノビノビ演奏しよう。」
ということを子どもたちに伝えた。
さて、本番。小学校と小学校の間に、高校生がシューベルトなどの歌曲を歌うのが挿入される。なんと、その伴奏者も日本人だと言う。大野さんというリーズ大学の大学院生。しばらく日本語を喋ることはないか、と思ったら、さっそく日本語を喋った。せっかく、ここで出会ったのだから、今度、ぼくの譜面を送ってあげよう。
コンサートの本番は、劇場のホワイエ、カフェのところで行われた。400〜500人ほどの観客。カフェのノイズなどもあるが、みんなが耳をすまして聴いてくれる。
大成功だった。特に、キューカンバールームを作った学校は、本番、思いきりよく歌えた。この学校の先生と、屋根のドタバタの学校の先生は、またヒューに学校に来て欲しいと頼んで来たらしい。ヒューが、「来年は、あの学校に行って、野村と一緒に何かやってもいいかもね。」と言うので、「じゃあ、子どもたちとキューカンバー・オペラでも作る?」と提案した。みんな大喜びだったけど、昨日の午後に行った学校の校長先生だけは、こんな場所で演奏させて、と怒っていたらしい。ロビーで行われる演奏会はダメで、劇場の中で行われる演奏会はいい、という価値観らしい。
ホエールトーンの全幕上演について、ヒューとアイディアを交わす。コミュニティの人と作ったオペラだけど、プロが上演できるような楽譜に残して、後々、オペラカンパニーや中学生や、色んな人が上演できる作品として残そう、と話し合った。そうした完結版の「ホエールトーン・オペラ」の日本版、イギリス版は、違った演奏解釈ということになる。ヒューは、それでもって2007年には、全部で18人のゲストミュージシャンでホエールトーン・バンドを作ってツアーしようよ、と言い出した。面白くなってきたなぁ。