野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

疲れる音楽

Leeds Lieder、火曜日とは別の2つの学校。まずは、7歳のクラス。最初に、「音・リズム・からだ」(民衆社)という本で紹介した遊び「たいふぅ〜ん」、「でこぼこ体操」、「コントレ・コントラ」をやった。日本語の歌詞を歌って意味不明なはず。でも、そのまま言葉と動きを真似してもらったら、「たいふぅ〜ん」はバカウケ。「でこぼこ体操」も好評。「コントレ・コントラ」で動物などに変身するのも楽しんだ。その後、くじら、イルカ、サメ、という日本語を使って短い歌遊びも作った。
それから、「屋根をドタバタ工事」の歌と、「ウォーター滑り台」の歌を練習。最後は全校児童に発表。ほとんど初心者のヴァイオリンの開放弦のピチカートや、クラリネットの一音などが、効果的にアレンジされていて、ヒューさすが!
続いての学校が、今までの学校と全然雰囲気が違った。まず、音楽室がものすごく狭い。こんな狭いところで音楽をやるのか、というくらいスペースがない。そこで、カナ、ザウルス、野村による即興演奏を披露したら、隣のクラスにうるさいから静かに、と音楽の先生。音楽室の横に廊下も部屋も何も挟まずに(しかも防音が全然できていないくて)教室があったら、うるさいに決まっているではないか。しかも、このクラスの子どもたち(11歳)は、異常なほど喜んだりはしゃいだりしている。音楽の先生の表情が暗い、不安そう。今まで行った他の学校よりも、子どもたちが普段から押さえ付けられているように感じた。ザウルスは、カナの予想通り、一番うしろで冷めた感じで座っている男の子二人のところに、暴れながら飛び込んで行った。
音楽の先生はヒューに耳打ちをし、ヒューがぼくに耳打ちした。「音楽の先生が、校長先生に怒られることを心配しているから、即興は終わりにしよう。」そこで、即興はここで打ち切って、歌の練習にした。
それから、2曲練習。「病院」の歌と、「船をこぐ」歌。病院の歌はいくつもの歌をつないだもので、かなり複雑。「船」は楽器を使った(チェロや、ドラムセット、木琴など)。これらの楽器が、全く生かされていない。どうやら、ヒューのいない間に音楽の先生がアレンジしてしまったらしい。かなり聞き苦しい。今日の午前中のと大違い。適材適所の反対。
全校児童を対象の演奏会で、他の学校での時のようにぼくが子どもたちが講堂に集まってくるBGMを演奏する。少しノリのいいリズムになったら、(押さえ付けられている)子どもたちが水を得た魚のように手拍子を始めて嬉しそうな表情を見せた。すると、校長先生がやってきて、しかめっ面で手拍子をやめさせた。
その後、校長先生の挨拶。子どもの顔を全く見ずに話している。酷い校長先生だった。校長のプレッシャーで、音楽の先生も不自由で、その影響が子どもたちに来ている。それを露骨に感じられて、驚いた。授業が終わった後、カナもヒューも同じ感想を持っていた。
それから、Leeds Music Serviceに行って、A-level(日本でいう高校生)の作曲クラブのワークショップをした。ヒューはこれには参加せずに、友人を訪ねた。
このワークショップでは、最初に、ぼくの紹介。動物との音楽の話や、オルガンスープの話など。それから、カナちゃんの空手指揮を説明して、実際やってみた。空手指揮の発展版として、平手を上げたら全員がAの音(チューニングみたい)、ニ本指でピチカート、耳を触ったらコルレーニョやそれっぽい音。
ザウルスの提案で、自分以外の楽器を使って即興。チェロの人が太鼓をやったり、ヴァイオリンの人がフルートをやったり。続いて、元の楽器に戻って、さっきの初めての楽器でやった演奏をそっくり真似てもらった。これは、同じ曲の別アレンジという考え。
その後、別のルールでの演奏もした。
そして、いろいろ話しているうちに、「疲れる」をテーマにメロディーを作ることになった。どうやったら疲れるだろう?音域が飛びまくったら、疲れるかも。ホワイトボードに一人一音ずつ音を書いていく。すごい跳躍だ。約15人が順に一人一音ずつ書いてできた音列、続いて、一人一音符ずつ音価(音の長さ)を決めていく。すごい跳躍する上に、複雑なリズムになった。それでも、みんなでユニゾンで演奏できた。調べてみると、7音からなる音階(C#・E・F#・G・A・B♭・B)からできていた。それをリーズ音階と名づけた。
最後はハッピーな音楽をやった。最後の最後にヒューが来た。ヒューがみんなにコメントした中で面白かったこと。
「途中で、野村やカナがルールを逸脱した時に、困惑した人、追随した人、いろいろな反応があって面白かった。作曲するということは、合わせる、合わせないで自分の好きにやる、何もしない、という選択をすることでもあるように思った。」
というようなことを言った。
カナとザウルスの最後の夜なので、フィッシュ&チップスの夕食。