野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ゴメンナサイ

今日も青梅第7小学校へ。まずは、1・2年生。野村誠のソロ即興〜片岡祐介のソロ即興〜片岡由紀のソロ即興〜3人全員での即興という順に間をあけずに続けて演奏を聴いてもらった。終わったら1年生が「もう1回やって〜!」と、5歳児とそっくりな反応。そこで、「じゃあ、もう1回やるけど、今と同じことをすごく速くやるね」と言って、5分くらいの即興と同じ筋書きで、それを1分でやってみた。そしたら、再び「もう1回やって〜!」と言うので、「じゃあ、もう1回やるけど、今のを逆の順番でやるね」と言って、終わりから始まりに向けて、逆の順にやってみた。
その後、子どもたちの創作曲を聴かせてもらった。1年生は、オリジナルソングを歌った。みんなホワイトボードの歌詞を見ながら歌ったので、全員が右斜め前を見ながら歌っている。その視線が面白いので、もう1回歌ってもらって、今度は歌っている間にホワイトボードを動かしてみた。子どもたちの周りをグルグル回るから、子どももあっち見たり、こっち見たりして歌を歌う。これが面白かった。
続いて2年生。こっちは色んな楽器や音の出るものでの創作曲で、メチャクチャ渋い。その良さを片岡さんが、「音を味わう」と表現したところ、子どもが「音に味なんてない!」と突っ込んできた。それに対して、「この音はピーナッツの味」とかやり返す片岡さん。ここでの味を巡ったやりとりが面白かった。
見学に来ていたジャズシンガーの鈴木重子さんに、1年生の作った歌を歌ってもらい、ぼくがピアノで伴奏、それに1年生もコーラスで加わり、2年生が楽器で音を鳴らし、全員でのセッション。美しかった。
休憩後は、見学に来ていたザウルスと片岡由紀ちゃんで即興をしてもらったら、子どもたちがかき回されて、お互いの距離が近くなっていった。そのまま、真ん中に近づいてきてもらって、「何がしたい?」と質問すると、「息がしたい」、「鬼ごっこ」など色々出るけど、人数も多いし話し合いが成立しないうちに、自由な時間に自然に移行。すごい音になっていった。いつの間にか、みんなが耳に手を当てたりはずしたりして、ワウワウサウンドを楽しんでいる。こんな感じで、いろいろ楽しんだ。
続いて、5・6年生との授業。最初に自己紹介。ぼくは昨年もこの子どもたちに会っているので、今年は演奏せずに、片岡祐介さんは打楽器奏者です、と紹介すると、片岡さんはジャンベを楽器のデモ演奏のように叩いた。他の打楽器もやって下さいよ、とお願いすると、4本バチで、木琴でメーリさんのヒツジを演奏。4本バチの演奏は、珍しいので、歓声があがり面白かったが、どちらも片岡さん以外の別の打楽器奏者でもできる演奏だった。続いて、由紀さんの演奏。「あれ?あれは、これ?ん、違う」と言って、色んな楽器を叩きに行くパフォーマンス。自己紹介としてこれをやる、ってことは、自分は何?これでもない、あれでもない、と自分探しを見せているみたいで、これは自己紹介とは言わないんじゃないかなぁ、と思って、「自己紹介なんですけど・・・」と突っ込んでみたら、子どもから「でも、面白いからいいんじゃない」と返事があった。結局、ぼくら3人、ちゃんと音で自分たちを紹介せずに終わった気がした。
その後、5年生の創作曲の演奏が始まった。それなりに面白かった。圧巻だったのは、その後の6年生。カスタネット、タンバリン、ハンドベル、トライアングルなどのありふれた楽器を使いながら、ミュートしたり、工夫して音を出し、一捻りも二捻りも加えた曲を創作して演奏している。ぼくは聴いているうちに、どんどん言葉を失った。そこにある音楽は、トライアングルのような単純な楽器の奥深さを、ここまで表現できている演奏・楽曲に、これまで接したことがあっただろうか?ぼくは、謝ることにした。
「ごめんなさい。」
突然、謝られて、子どもたちはポカンとしていた。でも、この音楽に感動した自分。そして、その前にぼくたちの行った自己紹介が、いかに音楽の本質から程遠かったか!これではいけない。でも、野村誠片岡祐介+片岡由紀は、もっとできる。「皆さんの演奏を聴いて、本当に反省しました。給食の後、もう1回、本気で演奏しますから、聴いて下さい。」
と言って、給食前の授業が終わった。本当にゴメンなさいだ。
給食後は、授業時間の45分のうち、結局40分ほどぶっ通しで演奏をし、それを子どもたちに聴いてもらった。今、ぼくと片岡さん、由紀ちゃんとでできる最善の演奏をするしかない。
午後は、3人による即興演奏だけで40分程度演奏してしまった。真剣に片岡さんと演奏できたし、音楽に向き合ういい体験になったし、よかった。
その後、ハーモニカ奏者の小林史真さん+P−ブロッでリハーサル。しょうぎ作曲や、絵本にもとづく即興、譜面ものの練習など、かなり集中してやった。かなり面白いし、相当くたびれた。