野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

本当の譜読み

横浜みなとみらいホールの宗方さんと、東京芸大松原勝也さん(ヴァイオリニスト)の研究室を訪ねる。東京芸大に来るのは久しぶり。3年前、熊倉純子さんと学生が、松原勝也さんとぼくの対談+パフォーマンス「音のアトリエ」を開催してくれた。その打ち合わせを上野でやったなぁ。5月に伊左治直くんのコンサート(このコンサートの絵本+CDが最近届いた、素晴らしい)で久しぶりに松原さんの演奏を聴き、楽屋を訪ねた。その時に、また何かやりたいですね、と言葉を交わしたのに、こんなにすぐに実現するとは思わなかった。
横浜みなとみらいホールでのワークショップとコンサートについての打ち合わせ。企画の趣旨を説明しかけるが、松原さんには、ほとんど説明は不要だった。「野村さんは、現代の民族音楽を作ろうとしているように思う。だから、時間をかけて多くの人の手を経て曲を作っていくのだと思う。そういう意味で、弦楽器は可能性があるし、最初に弦楽四重奏を聞かせたりせずに雑多なものから発想していく方がいいのでは。」というようなことを松原さんから提案してくれた。3月22日の演奏会でも、ハイドンとかベートーヴェンを取り上げるよりも、バルトークストラヴィンスキーを取り上げたい、とのこと。民謡採集から構築したバルトークストラヴィンスキーの音楽と一般の人が創作したフレーズを採集して創作する野村誠の音楽が一本の線でつながる。
そんな風に打ち合わせで話しているうちに、1日目は動物園でワークショップ。動物の絵をスケッチするのではなく、動物の音楽をスケッチする。2日目は、各自がスケッチした音楽(楽譜または楽譜らしきもの)をヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの演奏家が演奏し、そこから発展させていく。これを下敷きにして、野村誠弦楽四重奏を作曲、というようなプランが浮かんできた。この分だと、また11月にはズーラシアに行くことになるかもしれない。
それにしても、松原さんの理解の速いことに驚いた。プロジェクトを説明するのに、企画書をさっと読んだだけで、その裏の意図まで全て解釈できてしまう。この人は、心底の演奏家だ、と思った。以前、曲を演奏してもらったときにも、譜面に書いてあることだけでなく、譜面に書いていない裏の裏まで、さっと読んで理解する。本当の意味での譜読み能力がある人だ。
打ち合わせを終えて、岐阜へ。岐阜大学野村幸弘研究室へ(今日は、二つの大学の研究室を訪ねたわけだ)。徳島県立近代美術館で間もなく始まる展覧会で、エントランス上映する「モダンアートの音楽」の最終チェック。12分に編集してある映像をさらに凝縮させて8分になった。
原久子さんと電話して、野村誠野村幸弘によるズーラシア以前の動物との音楽シリーズの上映会が10月に大阪で実現することになった。
すっかり動物づいてきたなぁ。
というわけで、久しぶりに京都に帰って来ました。