野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

自筆をみながら

4楽章から成るチェロ協奏曲を作曲中で、8月23日に豊中世界初演になるわけです。しかし、その前に、8月上旬の両国門天ホールで、2台ピアノのための「ナマムギ・ナマゴメ」という曲が、高橋アキさんと寺嶋陸也さんによって、演奏されるので、譜面を送らなければいけません。昔の譜面は手書きなので、PDFファイルで送信とかではなく、コピーをとって郵送で送るしかないので、コンビニに行ってコピーをしてきました。つい10年前までは、こうしてコピーをとっていたものです。手書きの譜面のコピーをとって戻ってきて、ついつい他の昔の手書きの譜面を見始めてしまい、弦楽四重奏曲「アートサーカス」と、弦楽四重奏曲ズーラシア」を譜面を見ながら、録音を聴く。こうした録音は、演奏家の権利でもあるので、演奏家に許可をとらないとネットにあげたりできないので、個人的に聴いて楽しんでいるわけですが、うーむ、12年も前に書いた曲を聴いて、なかなかの力作で、12年経って、自分は成長したどころか、作曲の能力が後退したのではないか、と考えさせられる体験でした。それで、12年前の自分のスコアを研究しながら、この曲をどうやって越えられるのだろう?と頭を悩ませつつ、スコアとにらめっこ。やっぱり、手書きで書くのが良かったのか?

そして、野村誠牛島安希子「オルガンスープ?」という弦楽四重奏もスコアを見ながら、聴きました。ああ、この時代は、牛島さんも手書きだったんだなぁ、と懐かしく譜面を見ます。2006年の作品だから、野村が30代で、牛島さんが20代の頃かぁ。2006年に、横浜みなとみらいホールで、(動物園に関する新曲)「ズーラシア」、(横浜トリエンナーレに捧げた)「アートサーカス」、(そして、オルガンワークショップを起点にした)「オルガンスープ」と3曲弦楽四重奏の新作を発表し、それに加えて、バルトークストラヴィンスキーも演奏されるという豪華コンサートをやったのでした。意欲的な企画をやったものです。

http://d.hatena.ne.jp/makotonomura/20060322

テレビ番組「あいのて」の立ち上げをしていたり、えずこホールでの「ホエールトーン・オペラ」全幕上演の直前だったりするのに、こんな曲を書いていたのかぁ、若い頃はパワーあったんだなぁ、と若き日の自分に圧倒され、でも、音楽修行の日々を続けていったら、もう少し成長できるかもしれない、と自分を励ましつつ、これからも一歩一歩、自分の独自のやり方で音楽の勉強を続けていき、自分の音楽性を高めていこうと思いました。