野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

徳島県立近代美術館1日目

徳島県立近代美術館でのワークショップ1日目。美術館所蔵の絵画や彫刻を楽譜と見立てて、作曲するワークショップ。林加奈ちゃんと野村幸弘さんと約20名の参加者で、年齢層は幅広い。男女比率は女性がほとんど。最初に、インドネシアで作った映像作品「ドゥスン・ゲダレンの畦道」を上映(徳島文理大学の川人先生「50年前の日本の風景みたいで懐かしい」)。初対面の20人が、まだ緊張しているから、何かリラックスできた方がやりやすいな、と思うけど、緊張した気分に合った絵があるかもしれない。どれが緊張した人見知りした気分に合った絵か探してもらう。すると、4点の絵画と2点の彫刻が選ばれた。それぞれ自分の選んだ作品の前に楽器を持って行ってもらう。イーゼルが譜面台みたいに見える。そうやって、人見知り状態で絵や彫刻を見ながら、全員でアンサンブルした。全体ではあんまり合った感じにならず、バラバラな感じ。これがよかった。つまり、各自が人見知りしているから、周りに意識を配る余裕がなく、自分と(楽譜としての)美術作品だけで完結している。みんなと馴染んで、全体の一体感があると、一体感のある一つの音楽しかできないけど、人見知りして一体感が生まれないから、バラバラの異なる6つの表現が密やかに生れていた。
そこで、この6つの表現をそれぞれ、丁寧に掘り下げていけば、6つの曲ができるはずだ、と思って、まず、マティスの切り絵「ジャズ〜ナイフを持つ人」(だったかな?)を楽譜として解読してみる。ワカメみたいな形を、そのまま直接的に音に置き換えてみる。一つ一つの形がリズム(動き)に置き換えられていった。
続いて、「クラリネットを持つアルルカン」という彫刻。これは、「アルルカン」とうより「ちんどん屋」のノリになった。キュビズム的なカクカクした形を表現するのに、ぼくら自身が不規則で直線的なカクカクした隊形になって演奏。音楽って、輪とかなだらかな曲線に並んで演奏することは多いので、そのことが何か影響を及ぼすかも、と思ってやってみたけど、どうだろう?
続いて、「月光」というタイトルの抽象画。「月光3」と「月光10」の2作品が、音響的な2作品「夜の曲」と「昼の曲」になった。さっきのちんどん屋を演奏した同じメンバーとは思えないほど、耳を澄ます渋い演奏であり曲になった。
続いて、カンディンスキーのすごく小さい絵。タイトルを知らずに、絵を解読すると、「見知らぬ国からの来訪者」、「悪者」、「希望の人」、「見てる人」、「流れている」などが見つかり、小さな絵から違ったパートのあるシンフォニーができる。そして、タイトルを見てみたら「りんごの木」。みんな爆笑。
最後に取り組んだのは、「ニジンスキーのうさぎ」(だったかな?)という彫刻。これは、小学生の女の子が考えた木琴のフレーズを中心に、しかし、うさぎが迷ったり、転んだりする、という設定を、林加奈ちゃんが演じて合図することになった。そしたら、どんどん演技が増殖して、9分も演奏した。カナちゃんは終わろうとして、寝てみたり、走り去ったりするのだが、その度に、音で起こされたり、呼び戻されたりして、終わらせてもらえないのが楽しい。
ということで、明日もこの続き。このワークショップを編集してできる映像やCDは、9月からの展覧会で2ヶ月間流し続けます。お楽しみに。
徳島文理大学の川人先生(フルーティスト)や音楽療法専攻の学生さんたち、美術館のスタッフと、晩ご飯。皆さん、すごい熱心で、話がずっと弾んでた。明日も楽しみ。