野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

忙しい日(ホエールトーン4日目)

午後、えずこホールスタッフとヒューと大河原中学校へ。中学2年生選択音楽の18人(全員女の子)と45分授業。えずこホールの佐野さんの注文で、
「中学生、英語できるんで、英語でやってください。」
ということで、ぼくもほとんど日本語を使わず英語を喋って、英語の歌詞の歌を作った。こんな歌になった。

It's nice to meet Arisa.
She has never skied. Hana?
Megumi is waving to you.
Saki-chan, Saki-chan, Saki-chan,
Sitting on the floor.
I am beautiful.
Yes, I'm beautiful.
It is sunny today.

これが、なかなかいい歌。中学生はかなり大喜び。その後、吹奏楽部25人(一人が男、残り女)と90分のワークショップ。こちらは、通訳ありでやった。そしたら、随分、コミュニケートが難しかった。最初、ヒューは図形楽譜のようなものを黒板に描いて、
「これを演奏して」
と生徒に言うが、生徒は戸惑い、微かな音を出す。
「もっと、大きく!」
とヒューが大声で言ったので、ぼくは、この微かな感じを大切にしたいと思って、ちょっとヒューとバトンタッチして、
「じゃあ、へにょへにょな音出そうか。出るか出ないかのギリギリの自分の楽器の一番高い音出してみよっか。」
というところから始めて、へにょへにょアンサンブルに切り替えた。中学生に自由に表現するように強いるのは嫌だったので、
「ヒューに知っている日本語を言ってもらおう」
と尋ねると、ヒューは
「わかりません」
と言ったので、「わかりません」のリズムを使って作曲。その後、中学生の知っている英単語を羅列した「smile important bad library OK」というリズムの場面を作ったりした。まあ、そんな感じでワークショップの終わり、最後に質問を聞いたら、
「二人でピアノを弾いて欲しい」
というので、二人で即興をしたら、かなり喜んでくれた。
「涙が出てきた」
と言ってくれた中学生もいて、よかったよかった。

さて、えずこホールに戻ると、いよいよ、山川冬樹さん到着。ちょっと一緒に演奏、イギルの微かな音やホーメイが本当に気持ちいい。ほどなく、名倉亜矢子さん、梅津和時さんが到着。むっちゃ、楽しみ。7時にワークショップ開始。名倉さんにアカペラで歌ってもらって、最高に気持ちいい。山川さんのホーメイ、さらに梅津さんもソロ演奏。自己紹介の一発目から気合満点の演奏は、梅津さん、さすが!

それで、習字のネウマ譜で作った曲を、名倉さんのパートも含めて合わせてみる。しばらく続けているうちに、だんだん溶け合ってくる。いい感じ。その後「カバのオルガヌム」をやってみる。「カ」と「バ」の2文字を適当に繰り返しがら、ペロタン(13世紀の作曲家)みたいな音楽にならないか、やってみようという試み。もちろん、そんな感じにはならないけど。

で、そんな風にやっていたのだけど、段取り通りに曲を作っていくのが予定調和的でつまんない気がして、しかも、今日だけ見学に来ているゾウカバコ一味にも何かヒントをもらおう、ということになって、
「私といえば、笑いです。」
ということで、「笑い」の曲を作った。次に、仮面舞踏会の曲を作ることにして、オセロゲームルール適用のワルツにした。ここで、ワークショップの残りをヒューに託して、吹奏楽の練習に。

第2幕のメロディーを使って作曲した曲の練習。ところが、これは今日が初あわせだったようで、かなりバラバラ。そこで、指揮をしながら、曲想を伝えるために歌いながら、しかも、譜読みの間違いなどを確認しながら、1時間弱の短時間で音楽を作り上げていく作業は本当に疲れた。

ホテルでは、梅津さん、山川さん、ヒューと、ぼくの部屋で少し飲んで、それから寝た。