野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

12時間労働(ホエールトーン5日目)


朝10時にえずこホールでワークショップ開始。行くとみんなが勝手に楽器を鳴らしている。朝の挨拶とか何にもなしで、そのまま演奏している流れで、
「楽器やっていない人は、口と目を開けたり閉じたりしてください」
と指示して、そのまま妖術使いの登場の音楽にしてしまう。最初はノリが悪かったのだけど、名倉さんの娘さん(ユカちゃん1歳半)の手拍子のテンポに合わせたら、いいノリの曲になった。こんな風にして、挨拶もなく始まった。ま、いつものパターンか。

それで、妖術使いの音楽を演奏するのに、殿が傘で指される方が面白い、ということになって、ケイシさんが殿に決定。梅の精の音楽、熱唱するシンガーと続く。熱唱するシンガーが終わったあと、ホーメイ風の声で、
「だめだ、こりゃ」
って言うことを提案すると、
「そうすると、いかりや長介になりますよ。」
と山川さん。で、そうすることにした。鍼灸師の曲では、
「突いた痕が残った方が面白い」
と梅津さん。じゃあ、ミイラみたいにトイレットペーパーで包んで、みんなでマジックで模様をつけようか?などとアイディアは展開。生きてる楽器のシーンは、
「獅子舞みたいなのは、どう?」
と梅津さん。5人くらいで、大きな布に入って色んな楽器を演奏しながら移動する。これは、かなり面白いみたい。

電話のシーン。
「何か、聞き間違いで習字をすることになるといいんじゃないかな?」
と梅津さん。
「治療、治療、調理、修理、習字みたいにさ。」
「どうしよう、どうしよう、どうしよう・・・が、どうしょ、どうしょ、どう
しょ、・・・で、しょどう、しょどう、しょどう・・・てなるのは?」
と山川さん。そこに、ヒューという適役がいた。
「どうしよう、どうしよう」
を聞き間違えて、
「しょどう、しょどう」
と言うことになった。

昼休み。梅津さんが、
「こうやって、みんなでアイディア出していくの、初期の生活向上委員会を思い出すなあ」
と言っていた。前日、梅津さん、山川さんに、
「とにかく、ワークショップ参加者は、最初の3日間で思う存分作ってますし、表現していますから、参加者をサポートするなんて意識いりませんから、守り立て役じゃなくって、隙を見つけて、活躍してくれればいいし、今まで作ってきたものをひっくり返してくれていいから!」
と伝えたのだけど、二人ともその通り、どんどんアイディアを出してくれる大活躍。

黒と白の曲では、ぼくが
「黒」
と言ったら、梅津さんが
「アリ」
と返して、ぼくが、敢えて続けて
「白」
と言ったら、はずさずに、
「アリ」
と言ってくれたり、楽しく進む。ミュージカル調の「Power Of Love」では、どんどん拍車がかかり、ミラーボールを用意したり、ベッドだった台を回転させたり、いい感じ。

で、いろいろ面白くなって、その後、通し稽古をしたら、段取りに追われてつまんなくなっちゃった。一度、小さくまとまったので、明日は、もっとはじける方向に持っていく。本番で、すっごく面白く遊ぼう。

で、夕食後、吹奏楽のリハ。これが、昨日よりは圧倒的に良くなっていた。山川さんのホーメイ、梅津さんのクラリネットも入ってもらって、曲がぐんと広がりが出た。
で、ぼくの曲の最後では、立ち上がって動きながら演奏したりもして、ほぐれてきた。そこで、仮面舞踏会のシーンに入ってもらうべく、オセロゲームルールを説明。加わってもらえることになった。
「本当は、仮面舞踏会のシーンなんで、マスクが必要なんですけど・・・」
と言うと、なんと、吹奏楽団の人たち、以前コンサートか何かで仮面をつけたことがあるらしく、人数分仮面があるらしい。
「これは、運命としか思えない!」
と山川さん。

そして、琵琶・尺八の長須さんがついに到着。これで、4人のミュージシャン勢ぞろい。ちょっとだけ、長須さんと音だしがしたいな、と即興。ピアノと琵琶とホーメイ・イギルのトリオがすごく気持ちいい。長須さんも山川さんも、即興で演奏するのに慣れているので、いい感じ。でも、やりすぎず、楽しみは明日にとっておこう。梅津さんが、
「今10時、ってことは、朝10時からだから、12時間か。これ、労働基準法に反しているんじゃないの?」
ということで、ミュージシャンの皆さん、ホールの皆さん、お疲れ様。明日は、よいコンサートになりますように。