野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

合唱曲をつくる(ホエールトーン2日目)

今日は、えずこホールから小学校に行った。4年生18人との90分。ヒューと一緒。ヒューとは何も打ち合わせをせずに開始。どちらが何をどうやって進めるかは、全部その場の即興。ヒューは、ヘザーが見ているから少し緊張しているのか、手堅く「スイッチ」というゲームから始めた。簡単に言うとリーダーの真似をするゲーム。途中でリーダーを、ヒューから野村、そして、子どもたちへと移っていくうちに、教室はだんだん賑かになる。

で、スイッチ終了。最後にリーダーをやった「たくと」の動きが良かったので、その動きのリズムに合わせて、ぼくはピアノを弾き、ヒューがビオラを弾いた。「タクトリズム」という曲ができた。
「じゃあ、今度は別の人の曲を作ろう」
ということで、まさとの曲になった。カッパの異名を持つらしく、

こんにちはカッパ
マサトはカッパ
いつでもカッパ
キュウリをパクリ、どこでも食べる
死んでもカッパ

という歌ができた。ヒューがメロ作ったので、「こんにちは」の「ん」が1拍目になる歌になった。子どもたちに大人気で、みんな熱唱。

「次は、女の子の歌を作ろう」
ということで、二人の女の子が選ばれたのだが、名前が歌詞になるのではなく、好きなもの「ウマ」と「レーズン」に関する曲になった。ここで、教室からリコーダーを持ってきて、ウマのリズムを考え「ウマの曲」を作っていると、ハヤトがリコーダーを袋から出したり引っ込めたりする時に擦れる音がいい。で、みんなでリコーダーを袋から出したり引っ込めたりするので、リズム合奏をした。
「ハヤトテクニック!」
とヒュー。
「じゃあ、これはハヤトテクニックとして、海外にも広めるか」
と言うと、ハヤトは大喜び。その後、マリナがリコーダーの中に掃除用についている棒を入れてカチャカチャやったら、
「マリナテクニック」
とヒュー。こういった方法を駆使して、ウマとレーズンの器楽曲が完成

その後、今まで作った3曲をメドレーにしてみんなで演奏していたら、流れでヒューが「おやすみなさい」と寝てしまった。で、今朝、ヒューが
「ララバイって日本語で何て言うの?」
って聞いてきたから、子守唄がやりたいんだろうな、と察して、
「子守唄を歌うから寝てみて」
と子どもたちに言った。で、そこからは、ヒューの子守唄ゲームが始まった。これも、盛り上がった。

で、ここで、残り時間も少なかったので、見学に来ているヘザーを紹介した。
スコットランドの劇場で、子どものための演劇遊びをいろいろやったりしてる人で、3月までえずこにいるんだけど、今日はちょっとだけ紹介してもらうね。」
と言って、5分間だけ、演劇ワークショップ。もう、十分ほぐれているので、子どもたちもノリ良く反応。急に言ったけど、ヘザーも力を発揮できる場ができてよかった。
「もっと、こういうのを体験したかったら、ヘザーは3月までいるから、またチャンスがあるかも。」
と一応、ヘザーと学校をつなぐ可能性だけは残してこれたし、あとは、やるかやらないかは、ヘザーしだいかなぁ。

で、終わろうと思ったら、
「もう1回、マサトはカッパが歌いたい!」
と子どもたち。本当にお気に入り。

その後、教室に行って給食を食べる。
「こうやって、机をくっつけてみんなで食べるの久しぶりだよね。」
と小学生。え、いつもは違うの?
「いつもは、前向いて、食べるからね。インフルエンザが流行ってから、みんなで集まって食べなくなった。」
という子どもたちの仲のいいこと。やりとり聞いているだけで、自分の小学生時代に帰ったような懐かしい気持ちになる。ぼく、こうやって子どもと一緒にいるの、好きなのかな、というか、子どもにしろ大人にしろ、こんな感じの打ち解けた友人関係って、好きなんだろうな、って思った。

で、午後はえずこホールで、「音遊びの本」の本文の完成原稿を作る作業や、「たまごをもって家出する」の楽譜の校正なんかをしていた。

それで、7時からホエールトーン・オペラのワークショップ。今日は、習字で描いた線や模様を楽譜と見立てて(ある意味、グレゴリオ聖歌のネウマ譜みたいな感じ、声明の博士譜みたいな感じで)聖歌を作ろう、という企み。で、「アベマリア」の4線楽譜(定量記譜法)を見ながら、ヒューが聖歌風に歌うのに合わせて、みんなで書道セットをしながら、抽象的な図形を描いていくのだが、これが、結構気持ちいい。習字と聖歌は合うなぁ、なんだか心が落ち着くのだ。コンサートの本番前なんかに緊張するときなんか、みんな習字をすればいいんじゃないか、って思った。線に精神状態が露骨に表れる感じがして、いわゆる絵画よりも圧倒的にその部分が面白いと思った。

で、一つの楽譜(?)を楽譜として解読して、全員で歌ってみる。すると、それなりに、形や動きからメロディーラインやリズムが決まっていく。それで、2声部に分けて2重唱になった。最後は、ぼくが4拍子で指揮をする曲になっちゃった!

休憩後は、そこにある習字の結果できた楽譜をもとに、グループごとに解読して合唱曲を作る、というのをやってもらった。そしたら、できたできた。最初の曲は、ヒュー曰く
「ペンデレツキやリゲティみたいだね。」
という曲で、かなり微かな声で微妙な音程感の曲だが、作った本人たちは、
「和室で作ったから、西洋風にしようと思ったのに、和風になったね。」
と言う。男性チームも、持続音による和音と均等に打つ鼓から始まる曲で、5つの書を組み合わせただけあって、長い巻物のような楽譜で、テクスチャーが変化していく。もう一つの女性チームは、低音を点描で弾くピアニストが右手に傘を持って楽譜を差し、そこに高い声、不安定な笛のうねり、打楽器などが加わる曲。時々訪れる沈黙も含めて緊張感のあるサウンド
などなど。

合唱曲の一つの作り方。明日は全く別のタイプの合唱曲を作ってみよう。または、合唱曲を作る方法を参加者と考えてみよう。