野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ホエールトーン開始


いよいよ、今日からホエールトーン・オペラのワークショップが始まる。久々のえずこホールスコットランドの劇場の教育担当のヘザーが、一時的にえずこホールに滞在している。ヒュー曰く、
「さっき、ヘザーと話したけど、彼女はイギリスの方が日本より進んでいて、日本に色んなことを教えなければいけない、と思っている感じがする」
とのこと。一方のヒューは、昨年えずこホールのスタッフに、イギリスは進んでいるから、色々教えてくれと聞かれて、ノムラのやってるような「しょうぎ交響曲」にしろ、一緒にやっている「ホエールトーン・オペラ」にしろ、こんなクリエイティブなコミュニティのプロジェクトは、イギリスでは聞いたこともないよ、日本の方が進んでいるのか、ひょっとしたら、ノムラが進んでいるのかも・・・、のようなコメントをしていた。日本が進んでいるとか、イギリスが進んでいるとか、ではなくって、どこの国にも、保守的に従来のシステムを繰り返す人もいれば、新しいやり方を考え出す人(=「くつがえさー」・岡崎香奈さん命名)がいる、ってこと。

で、ヘザーのプライドを大切にしながら、話を聞いていきたいので、スコットランドの障害者の劇団で面白いカンパニーがあったら情報欲しい、そうすれば、エイブルアート・オンステージの人に紹介できるから、と質問してみたり、その一方で、ホエールトーン・オペラの内容を説明したりして、コミュニケイトをはかる。ちょっとだけ、ヘザーもくだけた感じ。一方、えずこホールのスタッフは、非常に意欲的で、劇場専属の障害者劇団が作れないかとか、色んな構想を持っている。

ヒューの希望で、温泉へ。雪山を見ながらの露天風呂は最高。

7時から、ワークショップの初日。イギリスでの第2幕の説明をして、途中で魔女の呪文を一緒にやってみたら、日本チームでやるとお経みたいになって、全然違って面白い。で、2幕の最後で、ブラックプールに着いた、と説明したら、
「お習字」
という反応。え?ブラック+プールから、墨汁で、習字かぁ。イギリスの歓楽街ブラックプールが、こんなにあっさり、習字に転換してしまうとは!今日だけ参加の高嶺くんに聞いたら、
「醤油」
日本的にしようとしていないのに、不思議と日本らしくなる。

その後、ヒューが、
「各自、何か一つ何でもいいから、この部屋の中とか、自分の荷物とかから、お気に入りのものを見つけてきて!」
と言う。ぼくは、外に出て、地面に凍りついた雪をはがして戻ってきた。人によっては、友人からの手紙、動かない車を牽引するロープ、拡声器、地面の土、(円を描く)コンパス、折り紙で鶴、カメラ、・・・・などが出てきた。
「じゃあ、今から4人くらいずつで集まって、持ち寄った物を歌詞に含んだ歌を作ろう!」
とヒュー。で、ぼくは補足して
「歌じゃなくても、何でもいいから、何かを作ろう」
と言った。で、ぼくのグループは、牽引ロープ、拡声器、カメラ、鶴、缶なんかがあった。牽引ロープで縄跳びしながら、
「カシャ、つる、缶」
と唱える歌になった。で、牽引ロープを「びよ〜ん」と言って伸ばして「UFO」と言う曲。ヒューや高嶺くんのグループは、
「ヘビー、エビドリアン、メイクアップ、スター、ポイント、ポイント、ポイン
ト、ポイント」
というメロディアスな歌で、コンパスの針でチクチクするような歌。別のグループは、
「おぼん・ぼうし・グルー・ボトル」
と自分たちの持っているものをヒステリックに順に叫び続ける曲。携帯電話の「もしもし」から始まって輪唱風に展開する曲、そして笑い転げたのが、とのさまの病を四者四様の治療方法で望む四部合唱曲。

ということで、初日は雑談だけで、何もできなくてもいいと思っていたのに、次々に色んなものができてしまいました。明日は、習字からスタートします。