野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

平盛から岐阜へ


朝から平盛小学校へ。今日が最終日。ヒュー、かなちゃん、ゆいちゃんと3人で。

10時少し前に学校に着くと、すでに音楽室から「なんでもいいですシンフォニー」が聞こえてくる。そこに、お菓子の袋をかかえた糸井さん。
「子どもたち、10時だって言ってるのに、随分早くから来て・・・」
とにかく、やりたくて仕方がないみたいで、しかも、自分たちの作った曲を合奏している。

みんな各自で好き勝手に楽器を演奏している中、女の子たちが手紙をくれたり、サインや住所を書くように求められたりする。それから練習をして、11時から、発表会。昨日急に宣伝したこともあって、観客は5人くらい。11時に始めて、11時45分に終わった。たった4日のワークショップで、随分とレパートリーができたものだ。

終演後は、記念写真とお菓子パーティー
「うちらが卒業するまで(あと2ヶ月以内?)に、また、ヒューさんたちに来てもらうようにして。」
サヤカが糸井さんに言う。
「あと、来年、ヒューさんたちが来るとき、よんでな。来るから。」
中学生になっても来るから、呼べという。こんなに喜んでもらえると、企画した先生も企画しがいがある。音楽の塚原先生、1組の担任でバンドでドラムをやっている橋本先生も、とても楽しんでくれた。
「春休みに、もう1回企画して」
さやかは、糸井さんに求める。この学校の子どもたちは、こんな先生がいてくれて幸せだなぁ、と思う。
そこで、糸井さんが、
「みんな、もう帰らなければいけない時間だけど、最後に5分だけ楽器で遊びましょう。」
と言う。自由即興の時間だが、気がつくと「なんでもいいです」のフレーズをみんなが演奏してアンサンブルが自然に成立する。ぼくは、特にコントロールしたり、仕切ったりしないで、放っておいたら、子どもたちが勝手に最後盛り上げて、息を合わせて全員でブレイクして、終わった。音楽家が仕切らなくっても、勝手にできるようになった。なんだか、たったの5日ですごい進歩だなぁ。これで、ぼくらの平盛のプロジェクトは、今回は終了。その足で、岐阜へ行く。

岐阜大学に着いたのは、午後4時。岐阜大学芸術フォーラムは、毎月1回行われている。フォーラムの日本語訳は「広場」だが、とにかく広場に人が集まるようになんとなく人が集まって、なんとなく交流する会。岐阜大学助教授の野村幸弘さんが、主催(大学が運営しているわけではなく、幸弘さんが勝手にやっていて、新聞などにも「大学を一般市民に開放する試みとか報道されて、今さら大学も許可してませんなんて言えない、というゲリラ的なフォーラムだ)。

ぼくらは、幸弘さんの「火影の音楽」というドキュメント映像の上映から参加(片岡さんのレクチャーは、終わっていた)。その後は野村誠野村幸弘のドキュメント映像(タイのが3本、イギリスのが日本)を見た。片岡さんは、Anantがお気に入り。
「あのタイの陽気なおじさんとセッションしたいなぁ。タイにも中川真さん(みたいな人)がいるんだね。」
ナラポンと真さんとのセッションは、
「精神病院の患者みたいな3人だね」
と片岡さん、加奈ちゃんが共通の見解。ぼくがIkon Gallery(イギリス)でやったペットを連れてきてもいいコンサートの映像も見た。犬と亀の関係が本当に面白かった。亀は無頓着で冷静。犬は亀に興奮して、飼い主が必死に引き止める。初めて何かが起こっている瞬間。

その後、片岡祐介さん、片岡由紀さん、坂野嘉彦さんによる坂野作品の試演があった後、幸弘さんから、
「まことさん、ヒューさんも、せっかくだから何かやってよ」
と言われて、ぼくは自分の書いている鍵ハモソロ曲(途中まで)を演奏。坂野さんが、
「野村さんのアプローチって、刃物の上を裸足で歩くようなギリギリのところで成立するようなのが本当に多いよね。すごい精神力だなぁ。」
と言った。多分、そのアプローチをぼくは安全策だと思っている。ギリギリのところでやると、注意が行き届く分、自分の能力が発揮できる。ぼくは、そういうタイプなのだろう。

ヒューは、コミュニティミュージックとは何かについてのレクチャーをした。自分の息子についての歌を歌い、親子で参加するグループを作って、8年間そのグループで活動したこと,、英語の話せない移民の人たちの歌を英訳して、CDを作ったこと、などを語ったところで、
「おなかが痛いから、ここで終わります」
と言って、トイレで吐いたらしい。食あたりのようで、ホテルへ。服部さんが親切にホテルをアレンジ。服部さんの妹さんが働くホテルへ。

その後、みんなとバーミヤンで合流。「即興演奏ってどうやるの」発売以降、ほとんど片岡さんと会っていなかったので、新鮮。片岡さんとは、本作りやレコーディングのため、7〜8月に何度も会っていて、そして一つのものを一緒に作り上げた関係だけに、また、全く別の観点で再会したかった。4ヶ月ほど、ほとんど会わなかったのが良かった。また面白いミュージシャンの友人として会えた感じがする。さて、何を一緒にしようか。

この会合は深夜2時まで続いた。