野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ポーランドの音楽

昨日の「問題行動ショー」について、いろいろ思い出し、反省したり次なる可能性を考える1日。

 

12月のポーランドに向けて、ポーランドのことをいろいろ調べてみる。オラシオさんのウェブサイトは、いろいろ貴重な情報がある。マセツキの音楽が、なかなかユニークだった。ショパンを産んだ国だけあって、ピアノ盛んだなぁ。7月10日に日本センチュリー交響楽団のメンバーが行うポーランド現代音楽の弦楽四重奏コンサートも楽しみだ。

 

オラシオ|note

 

ポーランド語も少しできるようになりたい。Albert Karchとポーランドツアーに向けて連絡をとりあっている。ルトスワフスキの本を読んだ後、今はA Polish Renaissanceを読んでいる。いろいろポーランドの音楽事情を予習したい。

問題行動ショー世界初演

ついに、ノムラとジャレオとサクマの「問題行動ショーヨソモノになるための練習曲」の世界初演。開場から開演までの30分間は、カーニバル(=舞台上、客席、ロビーにて、全出演者で同時多発パフォーマンス)を敢行。野村チームは客席最後列の3列に座って、楽器を鳴らし続けること30分。こうして演奏していると、一人、また一人とお客さんが入場してくる。まるで、花道を通って入場してくるお客さんが登場人物で、その入場のための音楽を奏でているような気がする。これまで数多くのコンサートや公演を行なったが、こんなにお客さんの来場を一人ひとり見届けた体験は初めてで、本当に新鮮だった。その間に佐久間チームは、舞台上で連なり踊り、ロビーで始めた砂連尾チームが何をしていたのかは、ホール内からは全く見えないが、そのうち、砂連尾チームもホール客席内を練り歩く。日本センチュリー交響楽団の楽団員は、客席内でヴァイオリンやクラリネットを練習。たんぽぽの家の岡部さんが山口さんの車椅子を押しながら、会場のいろいろなところに出没する。そして、30分間で、徐々にパフォーマンスのテンションが高まってきて、ピークに達した頃に、佐久間チームだったウェイリン(爆発ピアノくん)が、ぼくのそばにやって来て、太鼓を叩き始め、ついにはリーダーになって、アンサンブルを制し、さらに自らの合図で再開する。

 

佐久間さんの蚊取り線香ダンスの途中で、ぼくが椅子の上に寝転んで、ピアノを弾いていたのは、昨年の香港滞在中のピアノソファくんとのセッションへのオマージュ。ピアノをぼくと連弾したあと、すぐソファに横になる彼との時間。人前で決して演奏することがなかった彼が、昨年の6月のArt Fun Dayで野村と共演した時に、メーリンやベリー二が心底喜んでくれたのも、一年前のことだ。

 

砂連尾さんのお灸ダンスの時には、本でピアノを演奏した。韓国語の辞書でピアノを演奏したのが1993年難波べアーズでの大友良英さんとの即興。その後、あまり本を使った演奏をしたことがなかったが、今日は、鍵盤の幅に合う本を厳選し、演奏してみた。

 

野村の新曲の「問題行動ショー」を、日本センチュリーの巌埼友美さん、吉岡奏絵さんが本当に素晴らしい演奏をしてくれた。何が素晴らしいかと言うと、クラシックやオーケストラの演奏ではアウトになってしまうような一線を超えた演奏にチャレンジしてくれたこと。やりすぎないように気をつけるのではなく、やりすぎちゃってください、という野村の言葉を、きちんと受け止めてくれた演奏。この演奏に砂連尾さんと佐久間さんが応えてくれてのダンスだった。

 

香港のi-dArtのメンバーたちが、本番に力を発揮した。それぞれのセッションを強制終了せずに、もっともっと長く味わいたいのが本音だが、出演者全員の良さをコンパクトに伝えていくために、時々強制終了もする覚悟でいた。しかし、各パフォーマンスをi-dArtのメンバーが頃よくまとめて終え、テンポよくショーは進んでいく。本番に強い人たちだ。それにしても、観客の方々にも随分助けられた。客席の空気はとてもよかった。

 

終演後、すぐ楽屋に戻って水を飲んでいたので聞き逃したのが、舞台上でシウクン(仕切り女王)が弾いたピアノ。最後の最後に、さすがだ。

 

アフタートークで、途中でメーリンを呼び込むも拒否されたので、出てもらえないかと思ったが、最後の最後に舞台上にあがって、猛烈にメーリンが語ってくれた。終演後もいろいろな方とお話することができて、触発され興奮し続けた。

 

香港の3ヶ月から1年経って、こんなことが実現して、まだこれから香港の人たちとの交流は続いていくのだろう、と思った。続けていきたい。

 

残念なことは、新聞、テレビ、ラジオの取材が一切なく、香港からやって来ての交流が、一切メディアで報じられなかったことだ。マスメディアでは報じられなかったけれども、これから自分で少しずつでも、今日のことの意味を、発信し続けていきたい、と思った。

問題行動ショー、いよいよ明日

いよいよ「ノムラとジャレオとサクマの問題行動ショー ヨソモノになるための練習曲」も明日になった。丸一日の濃密なリハーサルの合間に、明日のプログラムのための文章を作文。すごく濃密で面白い数々の場面に本当に感謝。プログラムの文章を以下に転載します。近くからも遠方からも数多くのご予約をいただておりますが、それでも空席は多数あり、当日券はいっぱいありますので、ご予約されていない方も、是非お越しください。

 

開演前

 

1 カーニバル

2 さいしょのフォト

3 してはいけません

 

第1部

 

1 はじまりの鐘

2 現代のことば

3 見えないは

4 香港の3ヶ月

5 それぞれの時間

6 けむりのたたかい

7 音楽教室

8 カエルとヘビの旅立ち

 

休憩

 

第2部

 

1 佐久間まねダンス

2 はじまりの鐘

3 ウッドブロックとレモン茶

4 二人のダンス 

5 太鼓の世界と踊りの世界

6 合気道対決

7 駅名リミックス

8 マジックショー

9 木琴の時間

10    帽子の二人

11   ふっ

12   ころがる

13   ダンス教室

14    愛不同藝術

 

ぼくは、昨年香港の巨大福祉施設JCRCに3ヶ月滞在しました。3ヶ月、福祉施設の中で暮らしながら、しかし、介護の仕事は一切せずに、そこで自由に芸術活動をする。それは、特別な時間でした。3ヶ月の間に、せっかくなので、この福祉施設の人々とできる限り交流をしたいと思いました。音楽家であるからには、交流するためにできることは音楽しかありません。広東語が片言なので、音楽がメインのコミュニケーション手段になっていきました。そして、音楽を通して、多くの友達を得ることができました。本当にあたたかく迎えてもらい、JCRCはぼくの第2の故郷のようになったのです。最後には、JCRCのアート部門i-dArtのアンバサダーに任命され、仲間の一員となりました。

 

滞在中に、二人のダンサー砂連尾理さんと佐久間新さんが訪ねてきました。彼らは、野村の香港での活動を見たいと思って訪ねてきたのです。二人のダンサーは、広東語は全く話さないのに、カラダでコミュニケートしていきます。I-dArtのメンバーたちとのダンスセッションは印象深かったのです。ちょうど、その時に、偶然にも豊中市立文化芸術センターのプロデューサー柿塚拓真さんも野村を訪ねて香港に来ていました。柿塚さんはクラシック音楽のプロデューサーでコンテンポラリーダンスを企画したことはありませんでしたが、そこで見た光景が印象深く、即座に「野村さんと砂連尾さんと佐久間さんの3人で、香港の滞在を舞台作品にしてください」とオファーがありました。

 

当初は、出演者3人だけの公演の予定でした。予算規模も決して大きくありません。しかし、この企画に賛同したi-dArtは、自ら渡航費を捻出し、強力なメンバー13人を送り込んできました。嬉しい誤算でした。香港からそんなに来るのならば、我々もと、(佐久間さんが長年コラボレーションを続ける)たんぽぽの家からも3名のメンバーが、(野村が5年前から関わっている)日本センチュリー交響楽団からも2名の音楽家が出演してくれることになりました。出演者合計21名。ノムラとジャレオとサクマの「問題行動ショー」を再演することは十分あり得ると思いますが、今日の21名が勢揃いするような惑星直列のような機会は、なかなか得難い奇跡的なことかもしれません。一期一会と言いますが、本当に、今日、この時間、この場所にいられることに感謝したいと思います。そして、今日、この時間、この場所に足を運び、目撃者になってくださった皆様にも、心から感謝を申し上げます。

 

では、最後までごゆっくりお楽しみください。香港に行く時は、是非、i-dArtをお訪ねくださいね。(野村誠

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほぼ全員集合!

いよいよ「ノムラとジャレオとサクマの問題行動ショー ヨソモノになるための前奏曲」の本番まで残り二日。大詰め。

 

本日からホール入り。照明の仕込み完了後、リハーサル開始。ステージのセッティングが既に美しい。砂連尾さんが、「これだけ見たら、バットシェバ舞踊団の舞台をイメージするけど」と言う。コンテンポラリーダンスの定型にはハマらない人たちがこれから集合する。

 

香港からi-dArtのメンバーが13人+付き添いスタッフ11人の24人が到着。2ヶ月ぶりの再会。2ヶ月のブランクが心配されるが、リハーサルをしながら、思った以上に早く場所の空気に慣れて、彼らの力を発揮してくれる。たんぽぽの家から水田くんも来て、香港チームとコラボ。

 

日本センチュリー交響楽団の巌埼さん、吉岡さんも到着して合流。西洋クラシック音楽の世界、コンテンポラリーダンスの世界、障害者福祉の世界、日本、香港、インドネシア、いろいろな世界があり、いろいろな境界がある。この人たちが今、同じ舞台上でリハーサルをしていること自体が、かけがいのない瞬間で、安易に感動などという言葉を使いたくないけど、でも、それは感動的だった。

 

そして、開場から開演までのプレ・パフォーマンスのリハーサルをしたのだが、これが素晴らしかった。もう、個人的には、今日、これが見られただけで感激で満足してしまいそうになるのだが、、、。ご来場予定の方、開演ギリギリではなく、少し早めに来ていただくのがおすすめです。

 

香港チームが帰った後に、センチュリーとダンサーとの絡みの練習もやり、最後に、ノムラとジャレオとサクマの部分をリハーサル。こんな人々と一緒にクリエーションできているのは、幸せ。感謝。

 

 

 

 

 

影の演出家

「問題行動ショー」に向けての集中稽古。with 砂連尾理さん+佐久間新さん。照明の藤原さんもびっちり付き合ってくださり、客観的に外から見ている人なので、藤原さんが実は影の演出家かも。愛を持って接してくださり感謝。

 

ほとんど休みなく5時間以上、稽古し続けた50代のおっさん3人。そして、香港の一行は無事に大阪に着いたようで、明日からは全員集合!

 

 

 

負荷をかける

6月29日(土)の公演に向けて、砂連尾理さんと佐久間新さんという二人のダンサーとの集中リハーサルが始まった。この二人とこうしてクリエーションができることは、本当に貴重な時間だ。

 

今日は、衣装を持ち寄って、衣装合わせもして、衣装も確定した。とりあえず、衣装が確定すると一安心。

 

稽古の内容のことは、ここに書くとネタバレになるので、詳しくは書かない。最初2時間カフェで話し合った後、リハーサル室に入ってから、5時間、ほとんど休みなく、ぶっ通し稽古。この二人のおっさん、疲れないのかなぁ。体力も集中力もあるなぁ。各シーンを試していって、いっぱい笑ったし、課題や可能性も見えた。順調な仕上がり。順調なので、欲が出てくる。順調を超えたものにするために、これから、どんどん仕掛けていきたい。

 

特に、今回、二人のダンサーのために書き下ろした新曲は、15分以上あって、かなり音の密度も多い曲なので、ダンサー二人がこの音楽に負けないで踊るのは、結構大変な音楽だ。それはわかった上で、敢えて負荷をかけている。負荷をかけると、それに抗うように、砂連尾さん、佐久間さんの力が湧き出してくると思うからだ。

 

この負荷をかけるのは、一歩間違えると、虐待やいじめにも繋がるので、難しい。でも、クリエーションで遠慮して、ぶつかり合わないと、中途半端になってしまう。この二人とは、信頼関係があるので、いろんなボールを投げられる。ガンガン投げても避けずに受け止めてくれる。ぼくも受け止める。投げてこい。

 

【主催】TOYONAKA ART TRIBE #2ノムラとジャレオとサクマの「問題行動ショー」 ヨソモノになるための練習曲 | 豊中市立文化芸術センター

 

たまたま問題行動ショー/月刊「武道」のコラム

ノムラとジャレオとサクマの「問題行動ショー」が、今度の土曜日に迫っている。あと5日だ。今日は、自宅で作曲と原稿執筆の日なので、終日引きこもり。作曲に関しては、「問題行動ショー」で、香港のi-dArtの人が踊るシーンで、ピアノとクラリネットとヴァイオリンの3重奏で書きたい曲があったので、それを書く。曲を書いているうちに、砂連尾さんが提案したアイディア、佐久間さんが提案したアイディア、香港の即興、たんぽぽの家で生まれた歌、いろいろなバラバラの点が、急につながり始めた。歌の歌詞が香港での即興の様子を歌っているようであったり、また別のことであったりして、どうして無関係なのに、バラバラなのに、つながるのだろう?偶然は必然で、必然は偶然なのか。たんぽぽの家の山口ひろ子さんならば、「たまたま」と言うだろう。たまたま集まった人が、たまたま色んなことをして、そこに関係があるもないも、たまたまなのかもしれない。今回の公演のプロデューサーが香港を訪ねてきた時期が、たまたま砂連尾さんと佐久間さんと同じ時期だったから、こんな公演をすることになった。ぼくが香港でたまたま弾いた即興演奏を、楽譜に書き起こす。たまたま。でも、それはそうなるべくしてそうなったように思う。でも、たまたま。

 

月刊「武道」にコラムを頼まれていて、〆切なので、原稿執筆。日本武道館が出している雑誌で、一ノ矢さんが「四股探求の旅」を連載している。新田一郎先生もこの雑誌への連載がもとになって、「相撲 その歴史と技法」(日本武道館)を上梓。2年ほど前に発売になっている。最近、気づいて慌てて購入。

 

相撲と音楽についてたった1200字で書くとなると、書きたいことのほんの一握りを書いたら、既に字数をオーバーした。でも、とりあえず原稿を書くことができて、ほっと一安心。それにしても、JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)で本を書こうとしているが、みんな多忙なので遅々として進まない。いっそのこと連載をして、毎月少しずつでも書いていくのがいいかもしれない。月刊「武道」に連載はさせてもらえないと思うので、月刊JACSHAが必要かも。

 

明日から、「問題行動ショー」の集中稽古が始まる。