野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「計画しない」を計画するー即興力とコミュニケーション

高松市美術館の開館・閉館の音楽の編集作業。閉館時刻が違うバージョンのものをつくる。要するに、「午後5時になりましたので閉館いたします。」を「午後7時になりましたので閉館いたします。」に差し替えるのだが、「午後7時」だけして言ってもらっていなくて、「午後7時」、「になりましたので閉館いたします。」とつなぐのだが、「時」と「になりましたので」がつながっていて、なかなか微妙につながらないので、結構手間取る。「午後7時になりましたので閉館いたします。」と言ってもらえば楽だったが、後悔先立たず。一応、全バージョンの初稿が完成。

 

今日は熊本の震災があった日で、熊本市現代美術館が災害とアートをテーマにしたトークを行いオンライン配信もあるので、オンラインで視聴する。日比野克彦さんが美術館の館長なので、司会というかモデレーターみたいな感じで、10人近い登壇者(金沢や東北からのリモート登壇者3名を含む)に話をふっていくと同時に、ご自身が能登に視察に行かれた時の現地報告などもされる。震災から3ヶ月ほど経っての現状を少しだけでも感じることができ、情報を橋渡しする存在の必要性を改めて感じる。

 

ライフラインとしてのアート」という副題もついていた。アートはライフラインのために存在しているわけではないが、ライフラインになり得るアートがあることは確かだ。ぼくは登壇者ではなかったので、ここに書いておくけど、マニュアルでは対応できない非常事態に対応できる即興力+互いに協力し合う人間関係がライフラインになり得る。要するに、

 

プラン通りに進まない柔軟な即興をすること

いろいろな人とコラボすること、

 

この二つをしておくことは、ライフラインになり得る。ライフラインだけを目的にアートをするわけではないが、プランされること、計画されたことを遂行することが多い日本の社会で、いかに計画から逸脱できる力を育む場を確保するか。その必要性が現代のアートに最も求められていることと思った。

 

このシンポジウムは、「熊本市第8次総合計画展」は、「計画」を感じる展覧会らしいので、強調しておきたい。災害は計画できない。紛争や事故も計画なく起こる。そういう予測不能な世界に対応していく柔軟さを獲得するために、我々は「計画しない」を「計画」する必要がある。「計画できないこと」を「計画」する必要がある。「計画」という概念を刷新する必要がある。

 

そこでキーになるのは、やはり「即興力」と「コミュニケーション力」で、それは人と関わるコラボレーションをすること、自分でルールを更新していく「遊び」とでも言うべきプランされ過ぎていない「ワークショップ」などに価値を見出せるとは、改めて思った。

 

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