野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

はじまりはマルチニーク/佐久間新さん即興音楽とのセッション

『世界のしょうない音楽祭』10年目。毎年、ぼくが新曲を作曲してきた。実は、最初の5年は非常に順調だった。4年目の時点で観客数も500人を超え、5年目も客席はほぼ満席の人気プログラムだったが、6年目がコロナで中止になって以降、風向きは変わっていく。7年目は無観客の収録。8年目以降、スタッフも入れ替わり、集客にも苦労する。そうした中での10年目だった。

 

2014年度 《日本センチュリー交響楽団のテーマ(第2稿)》

2015年度 《日本センチュリー交響楽団のテーマ(第4稿)世界の庄内 みんな兄弟》

2016年度 《日本センチュリー交響楽団のテーマ(第6稿)想家》

2017年度 《越後獅子コンチェルト》

2018年度 《青少年のためのバリバリ管弦楽入門》

2019年度 《祇園精舎の宿題の》

2020年度 《日羅印尼中の知音》

2021年度 《雪つもり時の流れが春を呼ぶ》

2022年度 《ちりもつもればチャッコーナ》

2023年度 《はじまりはマルチニーク》

 

会場となった大阪音大のミレニアムホールは、非常に弦楽器がよく響く音響だった。そして、今回の新曲はミレニアムホールの音響を意識して弦がよく響き合うように作曲したのだが、実際に本番やってみて、想像通り、いや想定以上によく鳴った。これは、出演者の皆さんが短い練習期間で最大限の効果をあげてくれたからで、野村マジックなんかではない。オーケストラという仕組み、パート譜という仕組みでコミュニケーションしているので、ぼくからワークショップ参加者一人ひとりと直接コミュニケーションすることは非常に少ない。でも、その代わり、各パートごとにプロの音楽家と市民の参加者と親密な関係が築かれて、そのやりとりの集積としてのオーケストラになっている。コロナ以降、ワークショップの時間も短縮になり、より短時間で効果をあげるために必然的にこういうやり方になった。それが効果を発揮するようになってきた。

 

第2部の出演者を、世界のしょうないワークショップ・オーケストラと呼んでいるが、第1部も、もう一つの「ワークショップ・オーケストラ」ができたようだった。渡邊未帆先生とマルチニーク(カリブ)のリズムを体験しながら、客席も一緒になって音楽を体験していく時間。

 

第2部が始まる前に、パートごとに紹介する時間を設けたのもよかった。あれがあることで、新曲のエッセンスや醍醐味を味わいやすくなっただろう。

 

みなさん、本当におつかれさま。

 

夜は、音凪での佐久間新さんの即興ライブを見に行った。前半が、エレキギターの岡村基紀さんと佐久間さんのデュオ。後半が、エレキギターの半野田拓さんと佐久間さんのデュオ。各1時間近くやっていて、佐久間さんのスタミナ凄い。食堂のバーカウンターの上によじ上って踊ったり、店の外に出たり、お面をつけたり、観客に絡んだり、色々な表現が即興で出てくる。

 

 

以下、参考映像、過去の「世界のしょうない」。

 

3年目がこちらの演奏。この時期は、邦楽器がたくさんあった。コロナ前だったので、参加者全員で声を出したりもした。庄内駅の近くのサンパティオホールで開催。

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4年目は、地歌の《越後獅子》に本格的に取り組んだ。豊中市立文化芸術センター大ホールで行い、500名以上の観客を集めた。

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5年目は、ブリテンの《青少年のための管弦楽入門》とバリガムランをテーマに創作。

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6年目は琵琶をテーマに取り組んだが、初演することができずに、コロナで本番が行えなく、7年目は、コロナでワークショップは全てオンライン開催で、本番だけ集まって共演。各自が自宅から楽器を持ち寄り、ソーシャル・ディスタンスでの演奏。

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8年目は、オンライン開催を中心に、サテライト会場では箏の楽器体験、西洋弦楽器の楽器体験を交互に開催。

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9年目は、対面でのワークショップを再開し(若干オンライン参加者もいたが)、西洋弦楽器の体験を中心にしたので、弦楽オーケストラのような編成になった。コロナ以前に比べると、コロナを経て市民参加者の数が減っている。

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