『世界のしょうない音楽』を、豊中の庄内で続けている。ぼくが(豊中市に拠点を置く)日本センチュリー交響楽団のコミュニティ・プログラムのディレクターになった10年前、『哲学カフェ・オーケストラin庄内』が始まり、その後、大阪音楽大学の井口淳子先生のコーディネートで邦楽器、バリガムラン、シタールなどの民族楽器が加わることになり、『世界のしょうない音楽祭』と名前を変えた。
(1)音楽の専門家と非専門家が、教える/教えられるという一方向的な関係ではなく、相互に学び合いながら音楽創作をする場を設定すること。
(これ以外にも色々あるが)大きく3つのテーマと格闘してきた10年だった。その10年目に新しい風として、渡邊未帆先生と大阪音大のミュージックコミュニケーション専攻の方々が関わって下さることになり、今年はカリブ海のマルチニークの音楽をテーマに創作をした。
現在もフランス領であるマルチニーク。沖縄本島くらいのサイズのカリブの島。ラフカディオ・ハーンが滞在した島。植民地主義と奴隷制度により西洋音楽とアフリカの黒人音楽が融合して生まれた音楽。分断、排除、共存について、様々なことを考えさせられる。
こうした企画を進めていくと、共存は言うはやすく実際には簡単ではない。関係者の中でも円満な関係もあれば、一触即発の紛争になりそうな対立の火種もあちこちにある。楽器同士も、音量も音律も異なり、様々な調整をしないと共存ではなく、お互いの音を打ち消し合う(マスキング)。だから、古典的な作曲家の仕事は、現代的には文字通り調整していくような仕事でもある。
作曲という西洋音楽の概念を、ぼくは以下の点で有効だと思って、実際の現場で応用している。
それは、21世紀におけるオーケストラ/社会を考えることで、それは19世紀の西洋のオーケストラとは違う構造であり構成になる。30人ほどの楽器初心者と10人ほどの楽器熟練者によるオーケストラ。尺八、ガムラン、シタール、ヴィオラ・ダ・ガンバ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ピアノ、打楽器によるオーケストラ。
2024年2月3日に大阪音楽大学ミレニアムホールで開催される『世界のしょうない音楽祭』(14:30開演)の第2部で、世界初演となる《はじまりはマルチニーク》はそういう音楽。この音楽は、音楽と社会の可能性について、一緒に考えていくための「きっかけ」です。そういう意味で「はじまり」でありたい。ぜひ、立ち合っていただき、一緒に音楽の未来、社会の未来を考えませんか?お待ちしております。
本日は、大阪音楽大学で『世界のしょうない音楽ワークショップ』の第6回目で、《はじまりはマルチニーク》が仕上がってきた。ワークショップ開始の1時間以上も前から集まって楽器を練習する市民参加者たち+センチュリー響と大阪音大の演奏家たちの熱意も素晴らしかった。