野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

鍵盤ハーモニカ/梅田哲也/チェロバスデュオ

いわき市立美術館の植田玲子さんと打ち合わせ。1月8日に開催のコンサート『野村誠とピアノニマスのケンハモコンサート 今日はとことん鍵盤ハーモニカ!』に向けて。初めてお話することができて、色々安心+楽しみ。

www.city.iwaki.lg.jp

 

ワタリウム美術館で開催中の梅田哲也展に行く。6名限定で参加するツアー型パフォーマンス。梅田哲也のツアーは、茶道に似ていると思った。他の時には絶対に体験できないワタリウムが味わえるので、東京にいる方は是非。

 

梅田哲也展|ワタリウム美術館

 

そして、両国門天ホールでTeam Liaisonの『チェロバスデュオ』コンサート。山澤慧さん(チェロ)、山本昌史さん(コントラバス)は、素晴らしい演奏家だとリハーサルの時点でも思っていたが、本番になったら本気になって全力を注ぎ込んできたので、リハーサルとは比べ物にならないほどのエネルギーと魂のこもった熱演だった。すごかった。ぼくの曲は、本当に説得力のある演奏になっていた。

 

川島素晴作品、いつもながらギリギリの完成だったけど、名曲で名演だったなぁ。赤い糸で結ばれている二人は、互いの弦が共鳴することもないパラレルワールドに存在している。時間も奏法も全く違う決して出会わない異界で奏でているのに、実は互いに赤い弦で結ばれていて、最後の最後に微かに一緒になる。この微かな「つながり」も、「リエゾン」。大学の業務をこなしている川島くんと、チェロバスデュオのリハーサルが、ほとんど交わることなく進んでいくのに、最後の最後に奇跡的に一緒になり本日の上演につながっていることのようでもあった。

 

徳武史弥作品はchat gptが作ったオノマトペによる小品で、面白いがとても短かった。大作が続く中、演奏者への負担を考えて短い曲を書かれたのだと思うし、そうした配慮ができることは素晴らしい。でも、もっとワガママになってもいいのかなぁ、とも思った。徳武ワールドをもっと聴きたかったから。同じ方法で書いた曲を他にも何曲か聴いてみたい。

 

佐藤伸輝作品は、どうもダサいYouTuberのチェリストを模倣しつつ、それを全く違う美意識の曲に仕上げた曲であるらしいことは、後で20代の方々との会話を通して分かったこと。それだけ聞くと、内輪ウケの音楽のようにも聞こえるが、実際には作曲家としての彼の筆力により、そうしたコンセプトなどはどうでもよくなるように超えて行く。伸輝くんが作曲した曲に対して、解説を書くゴーストライターを10人くらい用意して、鑑賞者はその中の一つを渡されて聞く、とかも面白いなぁ。全員が同じ曲を聴いているのに、それぞれが全く違う解説を読んでいたら。

 

客層がとにかく若く、高校の教室に紛れ込んでしまったのではないか、と思いながら、仲間たちとワイワイ言いながら過ごした20代の頃を思い出したりもした。

 

また、何かやりたいなー!おつかれさまーー!