野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ジェーンとノムのみんなでつくろう!いきなり音楽プロジェクト!!(2日目)

ブリティッシュ・カウンシルの助成で、吉野さつきさんのコーデイネートで実施の『ジェーンとノムのみんなでつくろう!いきなり音楽プロジェクト!!』の2日目。本日は、岡崎市の本宿にある冨田病院でのデイケアのお年寄りたちとのワークショップ。本宿のお代官様だった冨田家は、明治時代に病院を開業し、3代目の長男の冨田勲さんが音楽家になったため、次男が病院を継ぎ、その息子の冨田裕さんが現在院長である。冨田勲さんが音楽家になったから、今の院長が病院を継いでて、今、ここに我々がいる。不思議な出会いである。

 

冨田勲(1932-2016)は、日本の最初のシンセサイザー作曲家として知られる。数々の功績があるが、《展覧会の絵》をシンセサイザーで斬新なアレンジをしたレコードがアメリカで爆発的にヒットしたことでも知られる。

 

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大河ドラマやテレビ『きょうの料理』の音楽など、テレビの音楽も数多く作曲。

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お年寄りとの1時間のワークショップと聞いていて、1時間だけの短い一期一会だと思っていた。実際には、1時間だけど1時間ではなかった。スタッフの方々は、コロナ以降、初の外部からのゲストを迎えるための細心の準備をして臨んでいたし、お年寄りの中には、今日のために美容院に行った人、服装を時間をかけて選んできた人、お礼の挨拶を英語で言うために練習してきた人、色々だったようだ。実際の1時間の交流で美しい瞬間が数多くあったこと、ジェーンのコミュニケーション能力の高さは言語の壁などあっさり超えていくこと、を体感した。職員の方々との意見交換の時間では、あるお年寄りが帰りの送迎の車の中で、認知症のために何があったかは忘れているのに、「俺、今日、何かいいことあった?」と言いながら、終始笑顔であったり、普段、暴力的な振る舞いをする方が、ジェーンとの音楽的な濃密な交流を経て、部屋に戻られた後も、リズムをとり続けておられたとか、両手に杖をついて歩いている方が立ち上がって踊り出したとか、奇跡とも思える報告を数多く聞き、たった1時間なのに、それはすごく濃い1時間だったのだ、と改めて思う。

 

冨田病院の院長ご夫妻、吉野さん、ジェーン、施設の方と会食。冨田院長の地元への熱い思いを聞き、冨田家の歴史を聞き、素晴らしきシェフのお料理に感嘆し、最後にはお礼のミニ演奏もして、ホテルに戻る。濃厚な1日だった。