野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

パトリア日田音楽工房〜木の音楽と相撲道の神様

パトリア日田の15周年企画に向けてのリサーチ。九州は広いので、熊本県大分県は隣接しているが、在来線と新幹線と特急を乗り継いで行く。

 

パトリア日田の及川さん、川端さん、パトリア日田から春日ふれあい文化センターに転勤の黒田さんとリサーチ。午前中は、大山中学吹奏楽部を見学。平原先生の熱心な指導。10数名の部員なので、各パート一人ずつ。同じパートに上手な先輩がいて、見よう見まねでうまくなっていく、という環境ではなく、それぞれが一人分のパートを担っているので、責任重大。楽器を始めて日が浅い中学生ならではの音色も新鮮。同じ楽器でも、中学生と高校生と音大生とプロで音色が違うのは、子どもが成長と同時に声変わりしたり身長が伸びたりするような感じ。中学生には中学生の味わいがあるなぁ。

 

美味しいうどんランチの後、こだわりのコーヒー工房と屋根裏部屋の不思議な内装を経て、合唱団の練習に行く。パトリア日田の佐藤さん、石川さんも合流。ところが、練習開始の時刻が、誤って伝わっていたようで、空白の1時間ができてしまう。そこで、この機会を使って、「相撲道の神様 日田どん」について質問すると、すぐそこですよ、とのことで、日田神社に参拝。土俵もある。日田どんは、小学校でも習うらしい。日田どんについての資料を求めて、図書館に行くと、郷土資料が次々に出てくる。図書館おそるべし。パトリア日田の方々も、こうなったら「日田どん」も公演に取り入れようと盛り上がる。

 

少年少女合唱団の見学。コロナ以降、2年間ほとんど活動休止状態だそうで、2年ぶりに再開。新たに募集できない状態で、メンバーの数も半減。今日は10数名。かつてに比べて断然声が出なくなっているのだそうだ。それでも、2年前に計画していてコロナでできなかった演目を、うろ覚えでやってみてくれたりした。活動再開のきっかけになれば嬉しい。

 

マルマタ林業の万貴さんと木を使った活動について相談。最近、ミツヒモ切りという斧を使った伝統的な方法で木を切ってみたそうで、その時の動画などを見せていただく。長い年月をかけて育てた一本の木を、超短時間でチェーンソーで切り倒すのでなく、じっくり時間をかけて木を切ることで、木に対する接し方が変わるのでは、という。かつて詩人の吉増剛造さんから、一つの言葉に時間をかけて向き合いたいと、銅板に文字を打っていくことを始めた話を伺ったこと(もう30年近く前)を思い起こす。話の流れで佐藤製材所に行き、その時に切った木や佐藤さんが手作りで作った椅子を見せてもらったりする。杉は柔らかいから、杉の床の上に立っていても疲れない、などなど、木の話をいっぱい聞く。愛媛の大山祇神社が山の木の神様の総本山で、そこにお参りするという話を聞き驚く。なぜなら、大山祇神社は、相撲神事「一人相撲」が伝承されていることで、ぼくには意味がある場所だったからだ。日田で林業のことをリサーチしていたのに、なぜか相撲に巡り合う。そう言えば、「ねってい相撲」を調査した養父の水谷神社も林業の町だった。林業と相撲。

 

パトリア日田に戻る。パトリア日田の駐車場には、大蔵永季が投げたとされる石がある。相撲道の神様の痕跡は身近なところにある。パトリア日田で打ち合わせ。今後のスケジュール、募集の開始、などなど決まっていく。仕事の早い人たちだ。いろいろ楽しく語り合って後、帰りの車中で相撲道の神様「大蔵永季」に関する資料を読む。平安時代相撲節会に10回ほど参加し、現在で言うところの横綱にあたる最高位で相撲をとり、貴族の文献に何度も名前を出す伝説の人物。

 

https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/2/27866/20141016162354718248/OitakenChihoshi_167_27.pdf