野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

体験するピアノと相撲

里村さんの仕事がお休みで、ぼくも久しぶりのオフ。のんびりの一日。里村さんの休日ピアノに、林光の『ピアノの本』の連弾をやってたら、ぼくの曲が弾きたいとのことで、《相撲聞序曲》(2017)をやってみた。聴いているだけで体感できないことが、弾いてみると体感できるらしく、この曲は聴いてみるだけでなく、弾いてみるといいのか、と思う。そう言えば、この曲は、鶴見幸代が芸術監督を務めた『両国アートフェスティバル2017』のために作曲したのだが、その時の趣旨が「相撲とピアノは実際にやってみることで、より面白くなる」という内容だった。これは、東京大学相撲部長で『相撲の歴史』の著者の新田一郎先生と対談させていただいた時に、大相撲は高度に洗練された観賞用のイベントだが、相撲は実際にやってみることで面白さが増える、とアマチュアの相撲の実演を薦めていたのが印象的だった。そこに着想を得て、鶴見さんが実際に弾いてみる企画を考えた。だから、コンサートはプロの音楽家による相撲に関する2台ピアノの新曲初演だけでなく、一般公募のアマチュアがプロと共演する2台ピアノの相撲に関する曲が数多く用意され、多数のアマチュア横綱ピアニストに胸を借りるライブとなった。この曲は、プリモ(高音パート)は、本当にシンプルに作曲されていて、しかも、そこには相撲の太鼓のリズム、てっぽう、などの相撲の基礎も体験できるし、ブラジル音楽や、トーンクラスターや、転調、平行移動など、音楽の基礎も体験できて、それなのに聞き応え/弾き応えがある。

 

久しぶりの自宅で、畑の野菜は順調に成長していて、追加で空芯菜の種まきもする。十和田の問題行動トリオの精算をして、塔本シスコのカタログをじっくり観たりして、のんびりの一日が終わっていった。