野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

非対称の舞台《200m想》世界初演

北九州芸術劇場 x 九州大学 x ヒビノ株式会社 による舞台技術セミナーが開催され、門限ズ+(通称)ボーイズによる公演《200m想》が本日行われた。なかなか一言で説明できる公演ではなく、まだ何と形容して良いのか言葉が見つかっていない。とにかく、今まで体験したことのない新たな形態の公演だったことは確かで、このことの意味をこれから考えていくことになるだろう。

 

今日の公演を終えて、何かを成し遂げた感慨と同時に、新たなキーワードが浮上してきた。それは、「非対称性」だ。今日の公演は「非対称の舞台」だった。実際に公演の準備の上で、ぼくらは「非対称性」を強調する気はなく、2つの別々の会場での体験を、可能な限り同じに近づけようとしてきた。でも、同じにはならないので、そこを色々調整して作品を成立させた。そして、今日上演してみて、2つの会場で同じにならない部分にこそ可能性を感じた。こっちの会場で大音量で鳴っている音を、別会場では遠くで微かに鳴っていることにもできる。こちらの会場で無音で踊っているのに、向こうの会場では楽器を鳴らすことだってできる。こちらの会場で料理をしているのに、向こうの会場では巨大な包丁が投影されたスクリーンの前で、お芝居が行われていたりもできる。今回は、非対称性を強調したシーンは、それほど多くないが、それでも、北九州で上演した《200m想》と福岡で上演した《200m想》は、同じ40分の時間を同じテンポで展開したにも関わらず、全く違う体験だったはずだ。これは、今日の大きな収穫。

 

実は、今日の公演は、さらにzoomで香川に送っていて、香川では2つの公演を並べて同時に見るという甚だ不思議なビューイングが行われていた。香川の体験のことは、まだ全く想像できていない。

 

本当に大変な公演を実現できて、本当にみなさんおつかれさま。九州大学北九州芸術劇場、ヒビノ、その他関係者の皆様、本当にありがとう。この非対称性の謎を、もう少し深入りして考えてみたいけど、今日はここまでで寝ます。おつかれさまでしたーーー。