野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

骨の髄まで鍵盤ハーモニカ/十和田の下見/アコーディオン協奏曲

南川朱生さんと『骨の髄まで鍵盤ハーモニカ』を開催したのが1週間前。その時の記録動画が編集されてきた。ノールールで60分の即興演奏(実際は54分27秒)で、さっそくフル動画を堪能した。南川さんが素晴らしいのは、何かの音楽をするためのツールとして鍵盤ハーモニカを演奏するのではなく、鍵盤ハーモニカならではの音を出し、その結果が音楽になっている。だから、彼女の出す音色は鍵盤ハーモニカでしか出せない音ばかりだ。

 

コロナウイルスで延期になった問題行動トリオの十和田公演に向けてのzoomでの会場下見。十和田市現代美術館の中川千恵子さんの案内で、3月21日に延期になった《トワダノワダイ》の会場となる十和田市民文化センターを下見する。会場にあるカーテン、椅子、スクリーン、壁、床、調光室などを細かくチェックしていく。何気ない階段状の講義室も、パフォーマンス会場として見ると、色々な使い方で使えそう。続いて、3月20日の《ビジュツセッシュ》の会場である休館中の十和田市現代美術館に移動。第3期の企画展の展示や、新たに新設されたレアンドロの常設展示などを見せてもらい、そこでどのようなパフォーマンスが可能かを検討する。画面越しだと材質が分からなかったりするので、それを教えてもらったり。下見の後、公演に向けてのより根源的な話などをさせてもらった。音楽、ダンスという非言語のアートをしていて、非言語であるから分かり合えることもあるが、言葉を介して、アーティストの意図、美術館の方針などを共有する作業も大切。話し合いが非言語の表現を狭めてしまうのではなく、話し合いがあるからこそ、より自由になれるような、そんな会話を模索中。

 

いよいよ来週に迫ったコンサート『ピアソラナイト featuring 野村誠』のリハーサルが行われた。ぼくはリハーサルには参加しなかったが、途中で演奏者から質問のメッセージが入り、譜面を確認して返信。質問の内容を見るだけで、曲の細部まで丁寧に練習してくれているのが、よく分かる。2008年に作曲した《アコーディオン協奏曲》は、2009年にドイツで世界初演になり、2020年に日本初演の予定でリハーサルも進んでいたがコロナで中止になったりして、ついに来週、日本初演となる。途切れることなく演奏される4つの楽章から成る20分を超える大作。これ以上ないとも思える素晴らしいメンバーによって演奏されるのが、本当に嬉しい。

 

www.toyonaka-hall.jp