野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

問題行動ショー(十和田バージョン)編曲/十和田十景デモ録音/高橋悠治という怪物

正月3が日が終わり、今日からお仕事開始。十和田市現代美術館の『インター+プレイ』展は、第1期、第2期、第3期と3期で構成される。問題行動トリオ(野村誠、佐久間新、砂連尾理)は、第1期、第2期と、作品とインタープレイし、空間とインタープレイし、人々とインタープレイしてきた。第3期は、ここまでの集大成としての公演を行う。2月5日が十和田市現代美術館で『ビジュツセッシュ』、2月6日が十和田市民文化センターで『トワダイノワダイ』という公演になる予定。

 

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2月5日は、美術館の展示空間で行い、2月6日はピアノのある会場で行う。6日はせっかくピアノが使えるので、ヴァイオリン+クラリネット+ピアノの《問題行動ショー》(2019)を演奏して、砂連尾さんと佐久間さんに踊って欲しいが、今回は、ヴァイオリンとクラリネットはいない。そこで、《問題行動ショー》をピアノ独奏にアレンジし、そこに三本木小唄をトッピングした十和田スペシャルバージョンの譜面を書くことにした。今日はずっとその編曲作業をしていた。3人でやっていた曲を一人で弾くので、かなり難曲になるので、1ヶ月みっちり練習して臨みたい。さっそく編曲の譜面を印刷して練習開始。

 

それから、十和田でのピアノのツアー(企画:里村真理)で生まれたピアノ小品集《十和田十景》(2019)も2月6日に演奏し、佐久間さんと砂連尾さんに新作ダンスを作ってもらう予定。もともとの企画の記録動画があり、当時はコロナ以前だったので、こんなに密になって開催した。

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ということで、二人のダンサーのために《十和田十景》の10曲をピアノで弾いて、デモ音源を録音して送る。

 

今日は一日中、十和田の準備をしていた。

 

青柳いずみこ著『高橋悠治という怪物』(河出書房新社)読了。数年前に発売になった本だが、タイトルにあまり惹かれず、読まなかった。しかし、同じ著者の『音楽で生きていく』という本で、若い音楽家たちにインタビューしているのを読んで、この人は高橋悠治をどう描くのだろうと興味が湧いて、読んでみた。タイトルで想像するよりも、圧倒的に面白かった。悠治さんが悩んだり葛藤したりしながら、ピアノや音楽に向かい合っていく姿勢を描いているから。pou-fouの《情欲のメタル》という曲があり、それを大井浩明くんのために1993年ごろ《Peter Piper》というピアノソロにしたことがあり、さらに、大井くんの要請で1997年に大井+向井山朋子のために2台ピアノの《ナマムギ・ナマゴメ》にした。その譜面を欲しいと、悠治さんに言われて、高橋悠治高橋アキの兄妹で演奏してもらった。リハーサルに行くと、ビートの縦が合わないので、いろいろ練習で何か言ったような気がするが、本番でも、ビートなんて全然関係ないくらい合わないのだが、それは悠治流に譜面に忠実に演奏していて、その演奏は心底面白かった。自分が意図していなかった面白さがあった。その時に感じたことを、青柳さんがストラヴィンスキーなどで共演した時の体験談で書いておられて、いろいろ共感した。