野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

低音デュオの動画公開/のんびり/マリー・シェイファー

6月にロームシアター で行われた低音デュオのコンサートの動画が公開になった。ぼくが作曲した《どすこい!シュトックハウゼン》も演奏されている。野村作品以外も、大変素晴らしい演奏。

 

www.youtube.com

久しぶりの自宅なので、ピアノを弾いたり、箏を弾いたり、尺八を吹いたり、三味線を弾いたり、ケンハモを吹いたりと、気がつくと色々な楽器を手に取り鳴らしている。今週と来週は、コントラバスの近藤聖也さんの委嘱の新作を作曲したいのだが、今日はまだ昨日までの疲れが残っているせいか、降り続ける雨にうんざりしたせいか、家で音楽を聴いたり、本を読んだりして、ぼーっとして過ごした。

 

作曲家のマリー・シェイファーの訃報。88歳。イギリスに留学が終わって帰国する時、ジョン・ペインターが「マコトの言うことは、マリー・シェイファーの言うことに似ているから、連絡してみるといい。でも、彼は家に電話がないんだ。」と言って、住所を教えてくれた。でも、ぼくは、シェイファーに手紙を書く理由も思いつかずに連絡しなかった。その2年後に、片岡祐介さんが岐阜県音楽療法研究所に就職し、研究所でマリー・シェイファーの講演会をするというので、聞きに行った。普通に真面目な講演会で、その後、懇親会のような場に同席させてもらったが、なんだか、その形式的な場がつまらなく、それを甘受している作曲家までもつまらなく思えてきて、特に何も話したくなくなり、何も話さなかったような気がする。同じ場で、中川真さんが自分の日本語の本を手渡していること場面だけが、なんとなく思い出される。その後、ぼくはシェイファーのことを、ツェルニーのように思うようになり興味を失う。ベートーヴェンのピアノ音楽を学ぶために、チェルニーは練習曲集を作ったとすれば、シェイファーのサウンド・エデュケーションも、ケージの音楽を理解するための教材として有効だ。でも、チェルニーやシェイファーの音楽を介さずに、直接にベートーヴェンやケージでいいんじゃないか、と。ジョン・ペインターは10年ほど前に逝ってしまった。今頃になって、ジョンとも話したいことがいっぱい出てきたり、マリー・シェイファーとも話したいことがたくさんある。25年前のぼくは、創作したい情熱ばかりがあって、言葉はなかった。また、一人先輩がいなくなった。マリー・シェイファーやグレン・グールドを生んだカナダに、いつか行ってみたい。合掌。