野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

戸島美喜夫に人生を変えられる

朝5時40分に起きて、ホテルを6時にチェックアウト。タクシーでジャカルタ・ガンビル駅へ。駅で、昨日の予約から正式なチケットを発券してもらった後、朝食を済ませ、お茶を飲んでぼーっとした後、8時半、電車は出発。ジャカルタ〜ジョグジャ間が、エグゼクティヴクラスで、30万ルピア(3,000円)。

隣に座ったおばちゃんが、ジャカルタの「サン・クロレラ」で働いているらしく、日本に行った時の写真を見せてくれる。アガリスクサプリメントで、などと効用を宣伝してくれる。ひとしきりお喋りをすると、おばちゃんは寝てしまった。すると、反対の席の兄ちゃんが、自分はサックスをやるんだ、と言い出す。そして、ダイソーと仕事していて、柔道の道場にも通っているとのこと。エグゼクティブクラスに乗れる財力があるインドネシア人が、両隣とも、日本企業の関連の仕事をしているとは。

電車の車窓は、田んぼと畑が続く。以前だったら、漠然と眺めていた畑は、畝の形や大きさが気になって、結構、ずっと観察。畝と畝の間がやたらに深くて、そこに水が貯まっているタイプの畑がある。雨季にスコールが降れば、こうでもしないと畝が崩れてしまうからか。畑の畝の間の水の貯まる部分で稲を育てている空間節約型のケースもある。いろいろ勉強になる。8時間走っている間、ほぼずっと、農作業は手作業だったのですが、6時間経ったころに、唯一、トラクターを1台だけ見かけて、機械化!と衝撃を受ける。5時間半まで、トンネルが一つもなく、5時間半たったときに、初のトンネル。これも衝撃。結局、トンネルは、8時間の間に3つありました。

駅でタクシーに乗る。おっちゃんがチャンプルサリ(ガムランとポップスの融合したような音楽)を聴いている。これは、スラバヤ出身のグループとのこと。チャンプルサリの話をしたら、色んなCDを次々にかけてくれた。

ジョグジャの佐久間家でタクシーを降りた5秒後に、バイクに乗った人物が登場。こちらでバティックの修行中の日本人で、ガムランも上手な方。タイミング良すぎ。久しぶりの再会を喜ぶ。他にも、こちらの主や、ガムラン留学中の日本人の方(初対面)にも迎えられ、色々お喋りをし、近所のお店で久しぶりに食べて、懐かしの味に感激する。

これで、インターネットをつなぎに行って、今日は終わりと思っていたら、もう一つドラマがあった。ガムラン留学中の日本人の方から「私、子どもの頃から作曲してて、中高生の頃に、現代作曲家に作曲を習ってたんです」と言われて、「へー、で、その作曲家って誰ですか」と聞くと、「戸島美喜夫先生」と返ってきて、おったまげた。えっ、ぼくが高校生の時に弟子入りしようと訪ねて行った戸島先生だ。「君、先生に言われたところをそのまま直したら一流になれないよ」と、ぼくに独学の道を決意させた戸島先生だ。こちらの方は、作曲を習っていた間に、ジョン・ケージや、マリー・シェイファーや、色んな音楽の可能性を教わり、世界には色んな音楽があるし、日本の音楽も君は知っているのか、と言われて、世界の色んな音楽を聴いて、ガムランに出会ったのだそうです。ここにも、戸島先生の言葉で、人生が変わった人がいた。