野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

カエルの里の春の集い/逆オンバシラ祭り

京都から亀岡を通り、どんどん山道を登っていった先の京都府大阪府の境にある豊能町牧に、かつて佐久間新さんは住んでいた。そこには、美しい棚田の風景があるが、数年後には、田んぼの区画整理のために、この風景は一変してしまうらしい。そうした風景の中でダンスをしたり、音を奏でたり、遊んだり、お茶をしたりして過ごす様子を映像として記録に残そうと、今日のプロジェクトが行われた。野村は、ケンハモを持って行って吹き、草本利枝さん、岡本晃明さん、里村真理さんが3つのカメラで動画撮影という3カメ状態で撮影した。アップの映像も撮りたいと同時に、この広い風景の中でやっている映像も撮りたい。自由に即興でやると、草本さんが撮影している姿が岡本さんの撮影している映像の中に登場するとか、岡本さんが撮影している姿が里村さんの映像に登場するとかになってしまうので、今回は、自由に即興が始まる前に、アクティングエリアを決めて、それぞれのカメラがどこから撮影するかを決めて、その上で即興ダンスと即興音楽をした。

 

昨年「カエルケチャ祭り」でもご協力いただいた牧の古谷さんの敷地を使わせていただき、田んぼの畦道や裏山などで、撮影。裏山には、ツリーハウスもあって、高所恐怖症のぼくは恐る恐る上ったけれど、これまた絶景。撮影していると子どもたちが自然にやってきて、一緒に遊んでくれるのも、また面白い。最後の最後に、菜の花畑の側で演奏していると、カエルが鳴き出したのも印象深い。演奏しながら、この土地の虫だったり、空だったり、木だったり、色々なものに挨拶するつもりで演奏したり、そんなことを忘れて、音楽技法上の自分の課題に無心で取り組んだり、佐久間さんの動きに触発されて演奏したり動いたり、いろいろやった。この一年、コロナで広い空間で音を出したり動く機会が激減していたので、こういう経験は貴重。

 

その後、豊能町立図書館でのマイアミくんのプロジェクトの展示を見に行く。のせでんアートライン2019の「逆オンバシラ祭」の展示。20mで2トンあるコンクリートのオンバシラを作って、それを100人くらいの人で必死に坂道を運んでいく映像や写真記録など。本当に重いようで、「オモいをはこぶ」という動画記録は、本当に重い思いを運んでいる様子で、数十m進むのにも苦労していて、その時間の長さをあまり編集せずに見せていて、おかげで少しだけ実際の時間感覚や苦労が体感できた。様々な象徴として生まれたオンバシラは、その後、無残に切り刻まれて撤去されたが、その念は土地に残っていて、その念が引き寄せる力によって、人々が集い、新たな演劇が生まれてこようとしている。

 

「都市の予感」で関わったヒスロムや藤井泉さんが箕面を拠点にしていたり、箕面の北にある豊能町で本日、二つの面白い試みがあったりして、箕面の南にある豊中市とは「世界のしょうない音楽祭」など、いろいろ関わってきていて、自分の中では全く繋がらない点の出来事が、どんな風に繋がったり繋がらなかったりするんだろう、と思いながら、豊能町の東の亀岡市を経由して、京都市に戻って行った。なんか、少しずつ面白く繋がっていくといいなぁって、なんとなく思ってるんだろうなぁ。オンバシラで蒔かれた種や、佐久間さんが豊能町で過ごしてきた20年の歳月が育んだものが、繋がっていくといいなぁ。ぼくも、豊中のことを、少しずつリサーチしていき、自分なりにうまくリンクを作れるといいなぁ。