野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

小学生と四股/指の形の和音/石の楽譜の解読

豊橋の劇場PLATの企画で、賀茂小学校でのワークショップ。劇場の担当の大橋さんと、コーディネーターの山本さん(ピラティスの先生らしい)と向かう。コロナなので、冬の体育館で窓を開けて換気して行う。幸い天気がいいので、そこまで寒くないが体を動かさないと寒い。

 

3、4限目に1、2年生合同。2学年合わせて約25人。ぼくは、ケンハモイントロダクションをやるが、マスクを着用したまま、つばを飛ばさないように、マイクを使って声を出す。子どもたちに、「野村が大きな声を出したら、注意してください」と言って、子どもの側ではなく、ピアノの内部の弦に向かって、大声を出すと、子どもが注意してくれた。鍵盤ハーモニカを吹きながら、四股を100回踏んだ。鍵盤ハーモニカを吹き、ピアノを弾き(どちらも特殊奏法満載)、その後、四股をやるって、唐突だけど、これが野村の自己紹介なので、仕方がない。そうして理解してもらった後に、子どもたちに鍵盤ハーモニカをやってもらったら、顎で弾く子もいれば、頭の後ろで弾く子もいて、子どもの発想の柔軟さに感心し、アイディアをいっぱい教わる。今日は、鍵盤楽器とコードの話をしようと思って、ピアノは一音でもいい音が出るけど、指を二本使うと二音同時にならせて、組み合わせによって、いろいろな響きがするんだ。三本使うと、またいろいろな響きが出せるんだ、と言って、みんなに好きな指の形を作って、鍵盤に当ててもらう。そうすると、本当にいろんな和音ができる。一人ずつの指の形を、野村が大急ぎで譜面に落とし、みんなの和音を一人ずつ鳴らすのに、野村がユニゾンで重ねる合奏をした。本当に多様な響きが次々に出て、意外な響きの展開があり、面白かった。その後、6人組くらいの4グループに分かれて、シロフォンヴィブラフォンを一人一本のマレットで自由に叩いてもらう。その上で、各自、自分が一番気に入った鍵盤を一つ選んでもらい、4つの6音くらいの和音ができあがる。これまた、渋い響き。できあがった曲のタイトルは《暗くて綺麗な音怖かったまた考えます明るい》となった。

 

午後は高学年。こちらもケンハモイントロダクションの後、四股100回踏み。相撲の呼出しの話とかして、呼び上げをテーマに野村がピアノの即興演奏を披露し、自由に鍵盤ハーモニカをやってみるタイムで、肘で演奏する奏法など新奏法を発見の後、北海道の芽武の海岸で撮影した石の写真を配り、これを楽譜と思って演奏する無茶振りをする。6グループに分かれて活動開始。ところが、子どもたちは写真にどんどんマジックで書き込み、星図のようにつないだり、ドレミを書き込んだり、大きい石が低い音で小さい石が高い音としたり、グループによって全然違う解釈の楽譜を生み出し、月並みな表現だが、子どもの創造力の高さに本当にびっくりする。正直、この能力をもっと世の中に生かす仕組みを考えた方がいいと思った。これだけ柔軟な発想ができる子どもたちに相談したらいいこと、たくさんある気がする。もちろん、知識や経験があるからできることも多いけれども、知識や経験が少ないからこそ、こんなにできるのだ、ということを見せつけられる。さらに、1、2年生同様に、自分なりの和音を作ってもらい、野村が楽譜に書き込んで。最後に、子どもたちが発表してくれた石の譜面を、野村がピアノで演奏するタイム。同じ写真なのに、全然違う楽譜になっていて、これ本当に面白い。

 

放課後、担任の先生に子どもたちの印象について質問されて、無茶振りにクリエイティヴに回答する子どもに感動したことを伝える。1学年12人くらいが1クラス。これが、1クラス40人学級とかだと、集団の中に埋もれるとか、みんなで譲り合うとか、活動に参加しないとか、いろいろな問題が起こりやすくなる。でも、12人だと普段から全員が活動に参加しないとクラスが成立しない。全ての学校を1クラス12人にした方がいい、と思った。

 

劇場に戻ると偶然、ダンサーの京極朋彦くんと出会う。今、レジデンスアーティストとして滞在制作中らしい。きたまりの企画で、ダンスファンファーレ京都で共演して以来の再会。彼も、昨年、豊岡市竹野でダンス作品を発表したらしい。

 

愛知大学吉野さつきさんと久しぶりに会う。門限ズのこと、イギリスのジェーンとの企画のことなど話す。緊急事態宣言中の愛知県なので、閑散とした飲食店は20時に閉店で19時半ラストオーダー。20時なのに、まるで23時のような風景。

 

ホテルに戻り、今日のワークショップの和音を譜面に書く。

 

おっさん姉妹(片岡祐介さん+鈴木潤さん)が、1月31日に野村誠作曲《新しいおっさん》をオンライン配信で世界初演してくれるとの連絡が入る。楽しみ。