野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

合唱部/塩江美術館/サヌカイト/高松市美術館

高松市美術館の牧野さん、毛利さん、高見さんと、国分寺中学校へ行く。国分寺中学校の合唱部と山田中学校の合唱部が合同で、野村の新曲を歌ってくれることになっている。山田中学の河田先生のピアノ伴奏で、《翼をください》を歌うのを聞かせてもらい、野村が自己紹介で《鍵盤ハーモニカ・イントロダクション》をして後、野村の新曲《村山籌子:ライオンの大ぞん》の冒頭部分を中学生にいきなり歌ってもらい、その後、野村と河田先生で初見で歌いながら、新曲を歌ってお聞かせする。ここまでで4分あり、まだ童話の3割くらいしか進んでいないが、暗譜しなくて(楽譜を見ながら歌って)よければ、曲が長くなっても大丈夫、ということで、童話の残りも作曲することになった。

 

塩江美術館に移動。展示室で、ピアノの即興演奏。常設展示の絵画展にインスピレーションを得てピアノを弾いてください、のお題だったので演奏したが、演奏しているうちに、自分自身が展示の絵画の一つのような気分になり、「額縁に入れられたくない」、「まだ色を塗られたい」などと即興で歌い(語り)ながらピアノを弾く。美術館の中で「芸術」というフレームにはめられたままピアノを弾くのではなく、そこから自由に羽ばたきたい欲望が沸き起こる。

 

その後は、展示の絵画作品をお客さんに選んでいただき演奏。読書の絵を題材に、実際に本で鍵盤を演奏したり、南仏の風景画の中の船の動きから、ピアノの響板を擦ったり叩いたりして演奏したりもした。

 

最後は、企画展示室に移動し、鍵盤ハーモニカで、長谷川隆子(TAP2006に参加の三好隆子)さんの作品との共演もできた。17年ぶりのコラボレーションが実現して感無量。

 

讃岐の楽器になる石サヌカイトの宮脇さんのお宅を訪ね、サヌカイトの原石を色々触らせていただく。お孫さんの井上紅さんがご用意いただいた演奏用の小さなサヌカイト鍵盤たちも見せていただく。今朝の合唱団の中学生たちに一人ひとつ持って演奏してもらうのも良さそうだ。来年3月に向けて、人数分使えるようにご用意いただけることになった。ありがたい。

 

高松市美術館に戻り、展覧会『20世紀美術の冒険者たち』の会場での演奏。それぞれの作品に、

 

1)学芸員の牧野さんの短い解説

2)野村の鍵盤ハーモニカ演奏

3)野村のコメント

 

の3本立てで進む。

 

藤島武二《匂い》は、作品の解説を聞いたのに、描かれた女性の表情が印象的で、曲が浮かんでしまい、それを吹く。藤川勇造《詩人M》は彫刻で、こちらも顔だが、遠くを夢想するような表情に影響されて、ここではないどこかに思いを飛ばす演奏。クレー《花ひらく木をめぐる抽象》は、色彩と和音がパターンを織りなす音楽になった。カンディンスキー《全体》は、パターンではなく、もっと躍動する運動のような音楽になった。同じリズムでもクレーとカンディンスキーとでは、全く違うリズム感の音楽になって違いが体感できて面白い。福沢一郎《Posson d'Avril(四月馬鹿)》は、馬鹿馬鹿しいファンファーレのように始まりながら、どこに着地するのか分からない中心のない音楽になる。靉光《眼のある風景》は、沈黙の多い音楽になり、鍵盤ハーモニカの特殊奏法で様々なノイズが出てくる。北脇昇《クォ・ヴァディス》はワルツのような3拍子にのせた曲だが、明るくも暗くもなく、どちらに行くでもなく発展も展開もしない。田中敦子《作品》は、エネルギーの塊のようで、音を連射するような演奏になり、そのまま曲は終わらず演奏しながら、会場を移動し、エントランスホールまで吹きながら移動し、そのままピアノと鍵盤ハーモニカの一人二重奏になって終わる。最後に野村作品《DVななくなる日のためのインテルメッツォ(間奏曲)》(2001)を演奏して終演。

 

夜は、モロッコ料理店で、牧野さん、高見さん、(元高松市美術館学芸員の)毛利さん、東近美の鶴見さん、高松市美術館アドバイザーの原久子さん、長谷川隆子さんと娘さんと夕食会で楽しく打ち上げ。いよいよ3月3日は、35周年記念コンサート。