野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

Memu Earth Lab./メシアンゲーム2/リモートダンス

森下有さん(東京大学)と里村真理さんと打ち合わせ。実は、来週から北海道で2週間のレジデンスをする。十勝の芽武というところに、Memu Earth Lab.があり、

MEMU EARTH LAB

森下さんは2年前から、大自然と向き合う数々の建築群が立つ研究所で、場所との対話から建築を見つめ直すリサーチを行なっている。場所/環境を理解する上で、昨年は音を通して場所を知るために、Nick Luscombeと彼のプロジェクトMusicityと協働で、様々な音を通して、芽武という土地をリサーチし、今年、Nickの推薦で野村が初のアーティストインレジデンスに決まった。また、何が起こるか想定がつかないプロジェクトで、ワクワクするとともに、この時期の北海道の大自然の中でどうリサーチをしていくのか、不安も多い。今回、同行してもらえることになった里村さんは、東北での経験も多いので、雪とか気温とか服装とか的確に質問してくれて、まず、靴や服を買うところから始めなきゃいけないんだなぁ、とか、牧場とか見学できるのかもとか、断熱がしっかりしている北海道の家では外の音が聞こえてこないんだ、とか、初歩の初歩のことから勉強。アイヌのこと。建築のこと。全てが新しい。里村さんが並走しながら、彼女自身のプロジェクトにも発展していきそう。打ち合わせをしながら、脳内に想像上の風景が浮かび、それを楽譜として見たら、どんな音楽になるのかな、などと空想する。

 

1月7日に世界初演する「メシアンゲーム2」の作曲をしている。紆余曲折あり、当初の想定と全然違うものを作曲しているのは、2020年ならでは。変更をポジティブに捉えながら、簡単な手拍子で参加する2台ピアノ+手拍子の音楽を考え中。

 

アートミーツケア学会で、長津結一郎企画で、里村歩+遠田誠のオンラインダンスの公演とトークが生配信され、これを視聴。これは、もともと門限ズとして九州大学で行なったワークショップから生まれてきたデュオで、偶々コロナで、オンラインでクリエーションをすることになった。遠田誠は、やけに物がない自宅の廊下らしきところで、薄暗い照明の中、手の影がチラチラしたり、壁の間に挟まったりする。里村歩は、車椅子でカメラに近づいたり遠ざかったりしながら、時々、声を発する。表情豊かな顔と手が何かを語り続ける。

 

里村と遠田のデュオなのだが、実は、里村を写している介助者のごんちゃんも共演者で、さらには、二つのカメラを切り替えるスイッチャーをしていた人も共演者で、少なくとも4人がライブでパフォーマンスしていると感じた。ぼくが生演奏という形で関われば、それぞれのダンサーがお互いを見えていなくても、お互いの動きの気配を音楽として伝える役割ができるかもなぁ、とも思った。

 

このダンスを、録画で編集で映像作品として見せる方法もあるだろうが、とことんライブにこだわり生放送、生配信として見せる方法もある。どっちがいいんだろう?どっちの可能性があるんだろう?里村歩のダンスを見ていると、時々、本当に素晴らしい動きがあり、それが安定して計算して現れてくるというよりも、時々現れてきて、ドキっとさせられる。それを映像で編集するのか、ライブの爆発的なエネルギーを活かすか。と同時に、リモートでの2地点ダンスのシンクロなど計算して演出の精度をあげるのか。お互いを見たりするのに圧倒的な障害となるZoomでのセッションで、相手のやっていることは超能力でも使わないと分からない。だったら、お互いが爆発してぶつけ合って、リモートの遥か先にも気配が伝わるような、そんなぶつかり合いはライブ配信でも説得力を持つだろうな、と思った。

 

かなり作り込んで編集した映像作品も見たいし、荒削りでシンクロもしないようなぶつかり合いのようなセッションでの偶然の即興のシンクロも見たい、どちらの可能性も感じる今日のデュオだった。今後にますます期待だなぁ。