野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ゴルフと現代アートとだじゃれ音楽と

以前、美術家の島袋道浩くんがワタリウム美術館で個展をした時に、展示室にゴルフ練習場を作った。美術館に来る人は、現代美術に興味があり、ゴルフに興味があるとは限らない。どちらかと言えば、ゴルフに興味のない人が多いだろう。ゴルフをするつもりのない人が、美術館の中でゴルフと出会う。そういう場を島袋くんは作っていた。

 

ぼくは、ゴルフをやったことがない。父が家でゴルフのスイングの練習をしているのを何度も見たことがあるが、自分でゴルフをしたことはない。しかし、淡路島で屋根にのっている瓦を楽器として演奏しようとした時に、瓦を叩くのに適したバチを考案するために、試行錯誤した。その結果、ゴルフボールで作ったバチが良い音がして、ゴルフボール練習場を訪れ、不要な練習ボールを数多くいただいた。音楽とゴルフが接近した瞬間だった。

 

ぼくの脳ミソの構造は保守的なので、放っておくと、自分の好みの範疇の中から出ていかず、こうした思いがけない偶然の出会い、意外な組み合わせなどを次々に発想できるようにはできていない。だから、自分の保守的な発想を柔らかくするために、思考の飛躍を生み出すための仕組みを、いろいろ考える。そのうちの一つが、だじゃれ音楽だ。

 

だじゃれは、発音が同じだけで、無関係なものをリンクさせる。ユカタン半島と浴衣の間に、およそ何の共通点も見出せない。「だじゃれ音楽」を実践していて何が醍醐味かと言えば、論理やジャンルを跳躍するダイナミックさだ。

 

今日は、一日中、だじゃればかり考えていた。と言うのも、10月31日に開催する「千住の1010人 in 2020年」は、オンラインで様々な人々が集う形で、どんどん構想を変更している。もう、「だじゃれオンライン音楽祭」といった感じ。インドネシアのメメット には、石のセッションやって欲しいので、石=ストーンで、ストーンをどうやってだじゃれにするか、音韻連想していくと、「トントンストン」という相撲の太鼓のリズムが思い浮かぶ。相撲の太鼓と、メメットの石の音楽に繋がりがなかったはずなのに、「トントン・ストーン」という言葉が思いつくと、メメットの音楽と相撲の太鼓のリズムが繋がり始める。タイの民族音楽学者のアナンは、麺が好きだ。彼と麺を食べて麺をすするノイズミュージックをやりたいと思っていたら、麺族音楽学者という言葉が思いつく。民族音楽もいいが、麺族音楽もいい。そんなことを考えながら、企画名を一個ずつ考えていく。

 

電車で偶然隣の人が読んでいた本を覗き見して、興味を持って買ってしまうとか、飲食店で近くに座った人の会話が漏れ聞こえて、思わぬ分野に興味を持つとか、そういう想定外の出会いは、意識的に演出していく必要がある。今のところ、検索エンジン

AIは、現代美術を検索するのに、ゴルフ練習場が出てくるようなトンデモナイ情報のつなぎ方はしてくれないようなので、自分の頭の柔軟体操をして、振れ幅いっぱいに出会いを求めて、活動していきたいなぁ。