野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

リバーサイドの北斎バンド

9月5日は、ジョン・ケージの誕生日。1992年、80歳になる直前にケージが亡くなってしまったのはショックだったし、ぼくは水疱瘡になって、1992年9月5日のpou-fouのライブに欠場した。自分的には熱があろうと出演する気持ちは満々だったが、他人に感染させるリスクがあるので、自宅待機で欠場した。28年経っても、あの日の無念さを思い出す。

 

台風が近づいているが、京都も快晴。新幹線で移動中も、ずっと快晴で東京も快晴。浅草に再びやってきた。

 

いよいよ明日に迫った北斎バンドのコンサート(公開収録)。無観客コンサートになる可能性もあったし、さらには演奏者やスタッフが集まるのもNGになる可能性もあった中、8月の予定だったのを1ヶ月先送りして、人数を限定するにしても、北斎バンドの四重奏コンサートが開催できるのは本当に嬉しいことだ。

 

尺八の生の音、箏の生の音、イギルの生の音、木琴の生の音。この4つの生の音が交わって奏でる音が聴けること自体が、最高に幸せで、しかも自分が作曲した音楽を次々に演奏してくれる。素晴らしい演奏家たちが演奏してくれている。作曲家をしていて、こんな幸せなことはない。

 

実は、北斎バンドのコンサートは、2015年1月にマレーシアでやって以来なので5年ぶり。5年ぶりに4人で演奏するのに、そうしたブランクを全く感じさせない。マレーシアで一緒に過ごした時間が長かっただけあって、以前よりもアンサンブルに深みが出ている。8月に作曲した野村の新曲「Remote Tanabata 2020」が、めちゃくちゃカッコイイ。7月のオンラインワークショップを下敷きに作曲した曲で、今日、聴くまでは、この新曲に自信がなかったけれども、いきなり音になってみて、うわーっ、すごーい、と感激してしまった。あ、もちろん、リハーサルなので、作曲家としてチェックすることなどは、冷静にコメントしていましたけれども、でも、生きてる音の力に圧倒されて幸せすぎた。ああ、ぼくライブの音、好きなんだなぁ。もう、明日で終わっちゃうの寂しいなぁ。もっと、やりたいなぁ。次回が5年後なんて嫌なので、機会を作っていかなくっちゃ。

 

すみゆめの萩原さん、岡田さん、照明/舞台の大庭さんが、ノリノリでアイディア出してくれるので、楽しい現場。現場で拍車がかかるように面白くなっていくのがいい。ワクワク。音響の長屋さんがすっきりとした音場を作ってくれるので気持ちいい。

 

それにしても、北斎バンドは、箏と尺八があるから邦楽のようなサウンドでもあるのだが、三味線ではなく、木琴が入っているので、重厚ではなく軽やかな響きになる。そして、イギル(トゥバ共和国の胡弓)が低すぎない低音で土台をつくることで、無国籍感も出る。この四重奏のサウンド、本当に好きだなぁ。そして、4人の奏者の演奏も人柄も全部好きなんだよなぁ。

 

それにしても、2010年に、アサヒアートスクエアで北斎バンドが始まって、2012年に、その隣のアサヒビール本社ビルのロビーで演奏して、今年は、その隣の墨田区役所のすみだリバーサイドホールで演奏。10年かけて、隣の隣のビルまで移動してきて、墨田区隅田川とのご縁を感じる次第。すみゆめ、ありがとう。