野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

オンライン漬けの日

今朝も四股を1000回踏み、5月1ヶ月間四股を踏み続けた。来月に入っても、四股を1000回踏むオンラインの集いは続いていく。1000回踏んだ後のアフタートークがいつも面白く発見も多いので、来月からは四股ノートを始めることに。四股1000回を1000日踏んだ頃には、今の自分たちは四股の奥義の入り口にすら入れていなかったと感じるのだろうが、この1ヶ月間でも驚くべきほど様々な発見があり、それをアーカイブしていなかったことを、もったいなく思うほどだ。

 

本日、「第4回だじゃれ音楽研究大会」(オンライン)を開催した。本来ならば、今日「千住の1010人 in 2020年」を開催し、1010人の演奏家が集結し、千住という町全体を演奏する音楽会が実現していたはずだった。その演奏会は、10月に延期になった。そして、今日開催したオンラインのイベントで手応えを得た。10月の「千住の1010人 in 2020年」で、色々できると実感した。

 

例えば、今日は、みんなで茶碗を演奏したシーンがあった。各自がステイホームだからこそ、茶碗でセッションは何十人でも実現する。今日はやらなかったが、掃除機100台の合奏なども、オンラインセッションだと比較的簡単に実現する。ピアノ100台の合奏だって、オフラインでピアノ100台集めるのは大変だが、ピアノが自宅にある人を100人集めれば実現できる。洗濯機のアンサンブルなんて、なかなかできないかもしれないけれども、自宅に洗濯機があれば、洗濯機30台の遠隔アンサンブルも可能かもしれない。炊飯器の合奏だって、お風呂の演奏、、、。自宅に湯船がある人が、お風呂を演奏する大アンサンブルなんて、できそうだ。色々な遠隔オンライン合奏の可能性がある。そんなアンサンブルの実験ができそうだ。

 

今日は、「第4回だじゃれ音楽研究大会」(オンライン)の開催になった。急遽決まったイベントだったにも関わらず、だじゃ研(だじゃれ音楽研究会)のメンバーが12本のショートムービーを発表してくれた。司会やトークも、裏方スタッフも、初めてづくしのオンラインイベントだったけど、楽しみながら充実の2時間番組生放送だった。タイのアナンやインドネシアのメメット も新作動画を発表してくれ、佐久間新さんも即興ダンスに加わり、タイ+インドネシア+日本のオンラインセッションまでやった。こんな手作り感覚で番組つくれるの楽しい。もっとやっていきたいなぁ。この番組の様子のアーカイブ、近々、公開になる予定。また、公開になったらお知らせします。

 

番組の放送が終わったのだが、その後、十和田市現代美術館「地域アートはどこにある?」(堀之内出版)刊行打ち上げのライブ配信を視聴する。打ち上げを公開するってどういうことだろうと、覗き見感覚で視聴したが、乾杯があったものの、ほとんどシンポジウム状態で、2時間以上、真剣に語り合う会で面白く見た。本も読んだのだが、この登壇者たち、文字で想像していたよりも熱く語る人々だった。オンラインでも熱気が伝わってくる。現在の人々が密に集うことが難しい状況でのアートプロジェクトについて、ポジティブな見方が多くって、具体的に色々聞いていくと面白そうだなぁ、いやー、面白く拝見した。

 

と思って油断していたら、里村さんに誘われ、ついつい「地域アートはどこにある?」の打ち上げ2次会(オンライン)に参加することに。ぼくは著者ではないが、北澤潤くんのプロジェクトのページに写真一枚だけ、この本でぼくは登場する。2次会になっても相変わらず、シンポジウムのような感じで、まだまだ議論したいアート関係者たち。傍聴人で2次会から参加した気楽な立場のぼくも、興味本位でいろいろ質問したりしてみて、熱い議論はますます熱くなり、いろいろ本音の発言も聞けたり聞けなかったりして、面白かった。

 

”地域アート”という言葉に、ぼくはあまり意味を見出さない。そういう一群のアートムーブメントや現象があるとは、正直思っていないからだ。「千住だじゃれ音楽祭」という名称で、様々な活動を2011年からやっているけれども、その名称で、インドネシアでもタイでも活動したし、インドネシアやタイやドイツやイギリスからゲストがやって来たりもするし、千住の地元の人もいるけれども、沖縄から参加している人もいる。つまり、ぼくがだじゃれ音楽をやっているのは、地理的な「千住」であるだけでなく、拡張された「千住」であって、ジョグジャカルタも千住になったりするし、ヒュー・ナンキヴェルがDementia Landを上演した時のように、「千住」にイギリスのデヴォンが現れたりもするのだ。そんな国家や自治体の枠組みを脱した「拡張された地域」が活動のフィールドになってくる。今は、またオンライン上に「拡張されたフィールド」が作られてきて、新たなコミュニティが生まれてきている。ぼくは、(拡張された)地域で展開される(拡張された)アートに興味があるのだろう。だから、「地域アート」と言われてもあまり唆らないが、「(拡張された)地域の枠組みを超えた(拡張された)アートの枠組みを超えた何か」に興味がある。そういったものは、今、続々と生まれてきて、様々な実験を経て、どんどん展開し始めているに違いない。今日の「第4回だじゃれ音楽研究大会」もそんな感じがする。

 

それにしても、ナデガタ・インスタント・パーティーは面白いと思った。何が面白いって、現代アートの文脈でどのような切り口で語ることができるのか不明。単純明快なコンセプトとはとても言えない切り口で、活動をしている。アクティヴィズムとか、前衛とか、ポップとか、実験とか、参加型とか、どの切り口で説明しようとしてもなんだか収まりが悪い。そもそも、バーチャルリアリティをテーマにしたプロジェクトをするという口実のもとに集まって、最終的にウマの博物館を作って、文化祭のようでもあり、レクリエーションのようでもあり、パロディのようでもあり、でも、明確には、どれでもない。何でもないと言う意味で、類例を見ない。だから、どの文脈でも批評の対象にひっかかりにくい。でも、実は批評に飢えていて、アートワールドの中で活動することを拒んでいるわけでもない。こんな変なアーティストが、なんだかわかんないけど、活動のフィールドにし続けてられている日本って、面白いと思う。ナデガタ・インスタント・パーティーの何が面白いのか、何が価値なのかって、掘り下げて書くと面白いもの書けると思うから、誰かやらないかなぁ。

 

それにしても、今日はいろんな人と会って、いろんな人と喋った。