野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ハイドンレクチャー、天安門事件

今朝も四股を1000回踏む。

 

5月21日に予定されていた野村のレクチャーは、6月に延期になり、本日正式に6月7日にオンラインレクチャーとして行うことが決定した。

 

 

6/7(日)14:00~16:00

オンラインハイドン大學

出演:野村 誠(講師/作曲家、楽団コミュニティプログラムディレクター)、柿塚拓真(聞き手/日本センチュリー交響楽団

参加料無料、YouTube(日本センチュリー交響楽団の YouTubeチャンネル)にてライブ配信予定。

 

日本センチュリー交響楽団が行うレクチャーシリーズ「ハイドン大學」で講師を務めるが、これをオンライン配信する。解説する曲は、ハイドンの3つの交響曲(第93番、第95番、第97番)とホルストの「吹奏楽のための第1組曲」の4曲。これまで「ハイドン大學」で行なってきたように、楽譜から野村が読み取ったことを自由に話すトークトークのレジュメとして、新曲を4曲作曲し、1曲編曲した計5曲のピアノ曲を弾きながら、ハイドンホルストについて語る。

 

野村誠作曲 「ホルスト盆栽」

      「ハイドン盆栽 第7番」

      「ハイドン盆栽 第8番」

      「ハイドン盆栽 第9番」

ホルスト作曲/野村誠編曲 「シャコンヌ

 

で、「ホルスト盆栽」を作ったりする中で、ホルストに興味が出てきて、ホルストの伝記を読み始めた。Imogen Holst著《GUSTAV HOLST a biography》という本。色々と面白いエピソードがいっぱいだが、印象深いのが、ホルストが子どもに対する時に、大人に話す時と同じように丁寧な話し方をした、と書いてある部分。そういう考え方には、共感する。

 

天安門事件は、1989年6月4日に起こった。あの時、ぼくは大学3回生で、まさしく自分と同じ年のような中国の学生たちが天安門広場に集まって、平和的な民主化を訴えていた。ニュースで見る映像や新聞記事でしか知ることができなかったが、中国が民主化していく変化の波は止まらないように見えた。あんな風に突然、軍隊が学生たちを攻撃し、多数の人命が奪われるなどとは予期していなかったに違いない。何もできずに、あの状況を日本から見ていて、唖然とした。あれから31年。天安門事件をテーマに作品を作るならば、何年もリサーチして作るような大きなテーマだ。なのに、香港のモックさんが、数日前に、天安門事件をテーマに曲を作って送ってくれ、と言われて、断れなかった。31年前に、何もできずに唖然とした自分。曲を送ってくれと言われて、曲も送れないような自分は嫌だと感じて、即断で送ると返事した。でも、こんな重大なテーマ、じっくり作るのだったら、何年もかけたい。だから、今の自分による反応のような何かを送るのだろう。そのために、どんなアプローチができるのか?天安門事件のことを思い出すこと。天安門事件の手がかりになる記事を読んで見ること。そして、読めば読むほど、だんだん、一党支配で民主化が実現していない監視国家って、中国の話なのか、日本の話なのか、と思えてきた。31年前の中国の話は、現在の香港の話であるだけでなく、現在の日本の話でもあり得る。そして、それは、19年前に《DVがなくなる日のためのインテルメッツォ》を作曲したことと、結びつく。あの時に、DV問題はDV被害者にとって当事者性があるのに、ぼくはなかなか当事者になれなかった。でも、DV問題は、DV家庭だけの問題ではない。誰もが当事者であることに気づいて、作曲することができた。天安門事件。本当に本当に、悲しい事件で、ショックな事件で、未だに消化できない事件だ。