野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

聞き上手のとらおさん「無観客コンサートのはなし」

本日、大澤寅雄くんが聞き上手のとらおさん#01 「無観客コンサートのはなし」ゲスト:桐原美砂さん・柿塚拓真さんというオンライントークを開催していたので、視聴する。桐原美砂さんは東京交響楽団の事務局の方で、柿塚さんは日本センチュリー交響楽団の事務局。どちらも3月に、「無観客コンサート」のニコニコ動画のネット配信を行なった。

 

色々なことが語られたのだが、ぼくも思ったことがあるので、少し自分のためのメモとして書いておこう。こうした企画をした大澤寅雄くんに感謝。

 

ちなみに、ぼくが出演した日本センチュリー交響楽団の無観客コンサートについては、3月28日の日記を参照してください。

無観客コンサート「はじめの一歩」 - 野村誠の作曲日記

 

 

1)ネット配信を行なった際に、今までとは違ったやり方でのコミュニケーションが生まれたように思う。演奏家と観客の間で、さらには観客同士で。このコミュニケーションに、より特化した演奏の配信の仕方を発明していけるはずだ。モーツァルトが現代に生きていたら、ネット配信を生かした曲を作ったに違いない。ベートーヴェンが現代に生きていたら、コンサートという形式をぶち壊す何かを考え出したに違いない。観客のコメントがフィードバックされて、演奏自体が変わっていく可能性もあり得る。

 

2)ネット配信での観客参加の実験は、今までと違う聴取の仕方を生み出した。例えば、ベートーヴェン交響曲9番は、合唱で市民参加のツールとして活用されることもある。では、他のクラシックの名曲に、例えば、野村のような作曲家が、別のパートを書き足してしまう。「田園」にリコーダーで共演できます、鍵盤ハーモニカで共演できます、というアレンジをする。公演より前に、オンライン事前講習会やワークショップをやる。そんな風にオーケストラと共演してみる、なども可能性としてある。または、クラシック曲のアレンジではなく、こうした聴取の仕方を前提とした新曲を作曲家が作曲する。ネット配信で参加型のための交響曲を作曲する。

 

3)ぼくが関わった日本センチュリー交響楽団の無観客コンサートのネット配信では、プレのトークで、野村がベートーヴェンについて解説し、さらに、ベートーヴェンを題材にした新曲を作曲して上演して、その上で、ベートーヴェンのオーケストラ曲を聞いてもらった。今回はできなかったけれども、これで、ベートーヴェンのオーケストラ曲を聞いてもらっている間に、副音声として、野村が実況解説をしていく、などもできる。そもそも、スポーツの観戦などは、スタジアムでは現場のライブ感を楽しむが、テレビでの観戦などになれば、実況解説付きで楽しむことが多い。こうして、テレビなどで実況解説で詳しくなった上で、スタジアムに観戦に行くと、より楽しめたりする。また、副音声の解説ありで聞くのと、副音声なしで聞くのと、どちらで楽しむかを視聴者が選択できればいい。

 

4)オンラインで動画配信をしたとしても、経営的に言えば(短期的には)割に合わない、ということが語られていた。例えば1万人の人が視聴して、そのうちの250人が寄付をして、100万円の寄付が集まったというのは、1300席のホールで入場料4,000円のチケットが250枚だけ売れて、100万円の入場料収入があったというのと、金額的には同じだ。お金持ち一人が100万円払って、その人のために演奏する場合も、100万円の入場料収入という意味では同じだ。しかし、1万人の視聴者と出会えたということに、ぼくは可能性を感じる。その中に、どんな人が紛れているか分からない。今までオーケストラが出会ったこともなかったような人が聞いている可能性だってあり得る。全く違う分野の人が、何か全然違うプロジェクトや仕事を提案してくる可能性だって、ゼロとは言えない。出会いの場になり得る可能性もある。であるならば、オーケストラが持っている可能性を、色々な形でプレゼンテーションすることで、思いもかけない展開につながる可能性は十分ある。

 

などなど、書き出せばきりがないほど、いろいろ可能性がある。しかし、今はコンサートが開催できない、経営をどうしていくか先行きが見えない、不安が先行する時期だ。不安は不安なのだが、今、新たに種まきをしていかないと、ますます未来が見えないと思う。のんびりしていられないと思うが、でも、小さなチャンスで、一つずつチャレンジをしていき、次に繋げていけたらなぁ、と思う。そういう意味で、日本センチュリー交響楽団がこれまで何年も、小さなチャレンジをしてきたことが、少しずつ実っていることは、もっと評価していいと思う。そして、これを絶やさないようにするために、みんなで知恵をしぼりながら、道を探るよりないと思う。

 

今日は、それ以外は、遅れている確定申告に取りかかるために、領収証の整理をするという毎年恒例の作業をして過ごした。