野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

乱舞の中世

引越から2ヶ月弱、徐々に本棚に本が並べられるようになってきている。沖本幸子著「乱舞の中世」という本も、ようやく段ボール箱から本棚に移動。パラパラとめくり、180ページの以下の一節が目に止まる。

 

 そもそも乱舞がとても中世的だと感じるのは、「乱」という言葉やその熱狂性ばかりではない。即興というものに大きな力点を置いていたことも重要だ。決まった振りをなぞるのではなく、どこかに、その人その場の個性が投入され、その場限りの高揚感を生み出していく‥‥‥。白拍子舞のセメや宗徒たちの乱舞にはそれが象徴的に現れていたが、そうした瞬間的な力の凝縮は、能をはじめ、中世文化がもっとも得意にしたところである。

 

182ページには、

 

 乱舞の前の今様の時代には声、しかも、天に澄みのぼってゆくような細く高い美声が重視されていた。乱舞の時代になると、天から地へと、その到達点が180度転換し、しかも強く高らかに足を踏み鳴らすことに力点が置かれていく。

 思えば、あらゆる価値が転倒し乱れてゆく時代の中で、大地の荒ぶるエネルギーを自らの身体を通して転換させていくような舞が好まれたのも当然かもしれない。

 

その時代に生きたわけではないのに、まるでタイムマシーンで見てきたかのような文章だ。そして、なんだか現代の、ぼくたちがやっている現場のことを描いているかのような文章でもある。

 

1月15日に、ファリャの「7つのスペイン民謡より」について解説するために、ファリャの譜面を読んでいる。フラメンコのリズムが出てきて、昔、インドネシアでスペイン人のアンヘラからフラメンコを教えてもらったことを思い出す。

 

5月31日に開催する「千住の1010人 in 2020年」が、2020年の乱舞になる予感。