野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ヴィブラフォンの新曲

鍼灸に行って、身体を整えてもらう。

 

2月に會田瑞樹さんのリサイタルで世界初演ヴィブラフォンのための新曲「相撲ノオト」の作曲に着手。今日は、とことん双葉山引退相撲の土俵入りの動画に着想を得てのスケッチ。ヴィブラフォンは、打楽器だけれども、響きが豊か。これまでインドネシアガムランには数多く作曲してきたけれども、ヴィブラフォン独奏曲は初めて。でも、ヴィブラフォンの音域は、鍵盤ハーモニカ(37鍵)と全く同じで、音色はガムランのグンデルに似ているので、なんとも親しみがある。だから、相撲もテーマだけれども、インドネシア的な要素も曲に入ってくるような気がする。

 

インドネシアと言えば、明後日、東京藝術大学千住キャンパスにて、「千住の1010人 in 2020年」のプレイベントで、インドネシアの作曲家メメット・チャイルル・スラマットと、大阪が誇る即興ジャワ舞踊家の佐久間新さん、そして、だじゃれ音楽研究会のメンバーとコンサートをする。メメットの旧作を下敷きに野村がアレンジした新曲、メメットの新曲も披露する予定。

 

ということで、東京に移動。移動の車内で、Leta E. Miller/Frederic Lieberman著「LOU HARRISON -Composing a World」を少し読む。酸素タンクを野球のバットで叩く楽器を作ったり、トマト缶でガムランみたいな楽器を作ったり、アジアの音楽に広く関心を寄せて、台湾や韓国にも滞在して楽器を習ったり、ガムラン音楽をやったり、政治的な作品を数多く書き、原子力爆弾に強く反対し、舞台上でガイガーカウンターを置いて、それをマイクで増幅した音も音楽に取り入れたりした。原爆投下以前は無調の前衛音楽を書いていて、原爆投下直後は、神経症で苦しみ、回復して以後は美しいメロディーのある実験音楽を作曲した。ルー・ハリソンは自分の人生を二つに分割し、原爆投下以前の時期=B.B. (Before Bomb) 、原爆投下以後の時期=A.B.(After Bomb)、と呼んでいる。湾岸戦争の時には、多くの作曲委嘱を断ったそうだ。この本、音源のCD付で、大変オススメ。

 

こうして、ルー・ハリソンについて読んでいると、自分の活動に通じる部分が多く、この大先輩には共感することばかりだ(だから、ルー・ハリソンの生誕100年を祝して、2017年、ぼくは「ルー・ハリソンへのオマージュ」を作曲した)。この作曲家の功績は、もっともっと評価されていいと、本当に思う。それに、彼の音楽は、いつも美しい。

 

「千住の1010人 in 2020年」プレイベントvol.03 開催 | アートアクセスあだち 音まち千住の縁