野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

メメットありがとうーだじゃ研と佐久間新のジャティノム奇跡の夜

本日は、たんぽぽの家にて、「だんだんたんぼに、夜明かしカエル」のリハーサル。3月9日、10日の東京公演は、どちらも売れ行き好調で、完売間近とのこと。ありがたい。

 

「だんだんたんぼに、夜明かしカエル」は、佐久間新が演出の舞台作品。野村誠は音楽を担当。この作品は、佐久間新がつくる作品で、露骨にインドネシア的ではないが、それでも佐久間新の第2の故郷であるインドネシアを参照することで、作品の深みに到達できるかもしれない。

 

稽古を終えて、家に帰る。とりあえず、バリ島のケチャを聞いた後、インドネシアの作曲家スラマット・シュクールの「口ガムラン」を聞く。故スラマットのこの作品、仙台と名古屋で聞いたことがあるが、インドネシアで聞いたことはない。彼が、この「だんだんたんぼ」を見たら、どんな感想を持っただろうか。

 

www.youtube.com

小沼純一さんに「魅せられた身体 旅する音楽家コリン・まくフィーとその時代」という本がある。本の表紙には

 

マクフィーはバリ島の音楽と出会う。

それは西洋音楽とまったく異なったものだった。

「ひとりでに振動」し、空気を震わせ、

肌の表面と足うらとを同時にむずむずさせ、

皮膚の奥に秘められた骨ぼねとそれにくるまれた内臓にまで達する。

それは耳、五感のうちに聴覚のみならず、

全身的な、もっと生々しいものとして知覚・触覚される。

マクフィーは魅せられる。

 

とある。小沼さんの本をペラペラめくり、「だんだんたんぼ」のためのヒントを探す。バリに住んだカナダの作曲家コリン・マクフィーとイギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンが、2台ピアノでバリガムラン風のマクフィーの曲を弾いている動画を見る。

 

www.youtube.com

インドネシアの音楽に魅せられた作曲家はいっぱいいる。ベンジャミン・ブリテンは、「The Prince of the Pagodas」という「なんちゃってガムラン」のようなバレエを作曲した。

 

www.youtube.com

こうやって西洋音楽の作曲家が西洋楽器でインドネシア音楽を演奏するのに、インドネシア人は、スティーヴ・ライヒガムランで演奏したりする。

 

www.youtube.com

こんな時代である。日本の作曲家で言えば、西村朗に「ケチャ」という曲がある。西村さんのこの曲も、本当に素直に楽しい曲だと思う。

 

www.youtube.com

一方、武満徹クセナキスは、1972年にバリに滞在し触発されて、クセナキスは「エヴリアリ」を、武満は「フォー・アウェイ」を作曲した。クセナキスの16ビートな音楽と、武満の怪しげな音楽。どちらもバリの音楽に影響を受けたかもしれないが、まったく独自な音楽だ。

 

www.youtube.com

www.youtube.com

芸能山城組も、せっかくだから、聞いておこう。

 

www.youtube.com

こうやって、他の人のインドネシアへの憧れや影響などを振り返ると、また自分たちのやろうとしていること、自分たちの足元が客観的に見えてきたりする。特に、神戸公演の後に、いろいろな方から感想を言われて、そうした言葉の影響で、何かわからなくなりかけることもあるので。

 

3月の「だんだんたんぼに、夜明かしカエル」には、千住のだじゃ研(=だじゃれ音楽研究会)も出演する。佐久間新とだじゃ研は、インドネシアにもツアーした。もう一度、あのジャワでの狂乱の夜の動画(以下の動画の35分頃から最後まで)を見返して、初心に戻る。ああ、いい時間を過ごした。たじゃ研と佐久間新の貴重な思い出。作曲家メメット・チャイルル・スラマットがコーディネートしてくれたジャティノムでの夜の時間。ありがとう、メメット。「千住」という曲を作曲したメメット。もうすぐ千住で佐久間さんたちと公演するよーー。

 

www.youtube.com

 

tanpoponoye.org