野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ゆるやかなユニオン

お食事会。都市計画の専門の人とおしゃべりする機会。貧困層と賃貸住宅の話と言われて、ああ、それぼくらのことじゃないか、と思う。アーティストなど組織に属さないフリーランスは、定収入がないとして、家主が貸したがらなかったり、家賃を滞納するのではと思われ、所得の証明を細々と出すように求められたりする。さらには、ピアノを弾くとか楽器を弾くとなると、借りるのに苦労する。要するに、怪しまれる、疑われる。

 

助成金の申請をする時でもそうだ。アーティストが個人で申請すると、運営能力がないのでは、と疑われ、法人格などのある組織で応募すれば、疑われなかったりする。

 

疑う側の気持ちもわかる。逆に、疑われることで、活動に様々な障害ができるので、個人の側もユニオンを作らないと、どうにもならなくなることがある。ところが、アーティストなどは、個人で活動するタイプが多く、ユニオンに向かなかったりする。

 

ゆるやかなユニオンをつくる繋ぎ手が必要なのかもしれない。それは、大きな組織に個人を回収するのではなく、個人が個人として存在していくために、つくる柔らかい縛りの少ない組織。そうして、つくった組織が、結局、組織のために個人がある、という硬い組織になっていかないためには、どうしたらいいのだろう。

 

組織を、コミュニティと言い換える。

 

所属しているけれども、所属していない。曖昧なコミュニティ。

 

安い賃金で仕事を受けちゃってるアーティストたちのための労働組合ってないよなぁ。安い賃金でハードな仕事をしているアーチマネジャーのための労働組合ってないよなぁ。あるのかなぁ。少なくとも、日本でどういう状況なのか、聞いたことないよなぁ。そういうこと、みんな相談できずに、このギャラ、安いか、条件悪いか、とか分からずに、引き受けたりするのかなぁ。

 

ちなみに、開業医もアーティストも、個人経営であることには変わらない。開業医は様々な医療機器を自腹で入手しメンテナンスしなければやっていけないし、音楽家は高額な楽器を自腹で入手しメンテナンスしないとやっていけない。そういう意味で、どちらも軌道に乗らないと経営は大変なのに、いまだに、医者の方が音楽家よりも怪しまれないことが多いように思う。