野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

音結とのセッション1

和泉市立人権文化センターの人権啓発事業「音楽とデザインで子どもの生きる力を育てよう」の講師として、今日と明日、即興音楽のワークショップをする。企画は、NPO法人音楽サポートネット音結。チラシによれば、

 

音結は、音楽でコミュニケーションをとる団体です。年齢、性別、国籍、障がいの有無に関わらずすべての人がアクセス可能でオープンな「コミュニティ音楽療法」を目指して音で人と人を結び、共鳴の和を広げていきます。

 

 

とのことで、集まった子どもたち、大人たちと、2時間があっという間のセッションだった。途中で「ありがとうございます。またのお越しをお待ちしております。」と言った子どもがいて、それを即興で熱唱したら、大爆笑だった。面白いこと言ってくれると、触発されて、ぼくも面白い。

 

京都から和泉中央まで電車を乗り継いで2時間以上時間がかかるので、行き帰りに読書が進む。今、読んでいる本は、William Duckworth「Talking Music -conversation with John Cage, Philip Glass, Laurie Anderson, and Five Generation of American Experimental Composers」というインタビュー集。16人のアメリカの作曲家が取り上げられていて、年長者から順番になっていて、最初がジョン・ケージ(1912年生まれ)で、最後がジョン・ゾーン(1953年生まれ)。

 

順番に読んでいくと、途中で、4人のミニマルミュージックの作曲家が連続して登場して、4人の発言のずれが少し気になったので、ここに少しだけ書きます。

 

ラ・モンテ・ヤング(1935年生まれ)のインタビューを読むと ラ・モンテ・ヤングにテリー・ライリーが影響を受けて、「in C」をつくる。「in C」に参加したスティーヴ・ライヒがライリーの影響を受けて、反復する音楽をつくる。ライヒと一緒に活動して影響を受けたフィリップ・グラスが反復する音楽を作曲し始める、という影響関係があるという。

 

テリー・ライリー(1935年生まれ)のインタビューを読むと、やはり、ヤングに影響を受けたと書いてあり、今でも、ヤングとライリーは親交が深いという。ライリーからライヒが影響を受け、ライヒからグラスが影響を受けたと思うが、ライヒとグラスの見解は合致していないようだという。

 

続いて、ライヒ(1936年生まれ)のインタビューを読むと、ヤングからライリーが影響を受けて、ライリーの「in C」に参加し、その直後はライリーの影響が強い。その後、グラスが活動を始める時期に、ライヒとグラスは数多く共演し、ライヒがグラスに演奏家を斡旋したりサポートもしたし、影響も与えた。グラスは「Two Pages for Steve Reich」という曲まで作曲しているが、今ではタイトルは「Two Pages -Music in Unison」と変えられてしまった、と言う。

 

最後に、グラス(1937年生まれ)のインタビューを読むと、上記3人の作曲家の名前は一行も登場せずに、当時のニューヨークには、画期的な音楽を書く作曲家がたくさんいた、と言っていた。

 

余計なお節介だけど、ライヒとグラスの関係について、他人事ながら胸が痛んだ。