野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ケアする力

飛行機に乗って、ビューんと宮崎へ、ひとっ飛び。佐久間新さん、長津結一郎さんとの「はぐくみフォーラム 〜芸術と福祉で育む多様な社会」に出演。都城市文化振興財団と都城市社会福祉協議会の共催。財団の徳永紫保さんの企画。長津くんは、コーディネーターなのに、現場で機材のセッティングなどに一番迅速に対応できて、結局、主催者のスタッフの人であるかのように動く。今日はゲストなのだが、慣れている。実は、佐久間さんもそういう現場力のある人で、スタッフがいなかったら、なんでも気を利かせて先回りして、動いてしまうタイプの人だ。そういうことを、ケアするとも言う。マネジメントも、ワークショップのファシリテーションも、予定調和ではなく、予想外の出来事に迅速に気づき、即興で応対することが求められる。そういう意味では、二人ともケアする力のある人だ。そういう力を養うには、どうしたらいいのだろう?現場の経験を数多く踏むしかないのかな。

 

ぼくは、とりあえず、昨年の香港i-dArtの3ヶ月のレジデンスの話をする。i-dArtから編集動画を送ってもらったので、それを見せることもできた。そして、昨年のレジデンス中の最も問題作だったQQQ(=Quite Quiet Quintet)の動画も紹介。香港のJCRCは、1000人の人が暮らす福祉施設なので、音感がいい人、リズム感が顕著に良い人などが推薦されて、そういう人々とのセッションを数多くやった。いくつかのグループとセッションをするだけだったら、QQQのメンバーとは出会えなかっただろう。最終的に17ものグループとセッションすることにしたために、最後の最後にオプションのように躊躇いながら打診されたのが、QQQのメンバーだった。意欲がなく、無反応、無関心とみなされている5人。実際に彼らとの即興を始めると、誰も楽器を触ってもくれなかったし、静かで音がほとんど鳴らない。静かだからこそ、少し何かが起こった時に劇的だった。香港でQQQが体験できたことは、本当に濃密で豊かな時間だった。佐久間さんの「だんだんたんぼ」のレポートもあり、ディスカッションもあり、あっという間の1時間半だった。