野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

Jくんの図形楽譜と「十和田十景」の作曲

今日は、小学1年生のJ君と音で遊ぶ日。でも、出かける前に、まず、「十和田十景」の3曲目「扉はいつも開いている」を作曲して、浄書。教会のオルガンの思い出。できるだけ、どの曲も1時間以内に作曲する予定。15分で譜面を書いて、J君の家に出発。

 

J君の家に行くと、ヘッドフォンで電子ピアノを弾くことをすすめてくる。面白い子だ。ヘッドフォンをして、ぼくがピアノを弾いていると、プリセットの音色をいろいろ変えてくる。そして、譜面台の上に、手書きのとんでもない楽譜がある。なんと、J君が描いた楽譜。五線譜と絵が混合したような楽譜で、普通に弾くのは困難な難曲。音でイメージしたのではなく、視覚的に描いた楽譜だから、超難しいし、調合(#や♭)も意外なところについている。弾いていると、シェーンベルクの無調の音楽のような響きになったりして、面白い。気がつくと、ヘッドフォンの線は抜かれていて、Jくんが「今、どこを弾いてるの?」と聞いてくる。作曲者も、どこを弾いているかわからないようだ。

 

このシェーンベルクのような音楽に触発されて、J君は無調でピアノのデタラメ即興を始めるが、あまりにセンスが良いので唖然とする。この子、天才かも。半音階での即興になったり、ペンタトニック(5音音階)の即興になったり、ダイアトニック(ドレミファソラシ)の即興で転調したりして、楽しそう。散々、即興を楽しんだ後、「スパッゲッティマーチやろう」と言って、鍵盤ハーモニカを準備するJ君。初回の時に作った鍵ハモデュオの曲だが、今日は、以前よりも、もっとアドリブをいろいろ入れようとするJ君。自分がオクターブユニゾンで演奏して、それに合わせて、ぼくに三度上でハモるように指示してきたりする。そんなことをしているうちに、急に、鍵ハモで、真似っこ遊びになる。彼の出す音を、ぼくが真似をする。そうしているうちに、彼が気に入ったフレーズを見つけて、新曲ができる。それをぼくが譜面に書き留める。すると、これは、「スーパーマリオオデッセイ」だかなんだか言うゲームの音楽に似ている、と言って、その曲を鍵ハモで再現しようとしてくれる。今日のレッスンはそんな感じだった。何にしても、毎回、あまりの創造力の高さに驚かされる。

 

J君の家から帰り、洗濯の第2弾などをしつつ、「十和田十景」の4曲目、「ピアノ教室とあいとくん」を作曲。これは、3曲目とテイストが似ないように、軽快に。続いて、5曲目の「南部裂織保存会」を作曲。こちらは、渋く怪しげな曲。

 

ここで、香港のi-dArtと4月の国際会議の打ち合わせ。佐久間新さん、砂連尾理さんも一緒に。国際会議の開会式から、すでにパフォーマンス的な開会式らしく、本当に面白そう。ベリーニもメキシカも相変わらずのハイテンション。ああ、一年前に知り合ったばかりなのに、不思議だなぁ。故郷に帰るみたいな気分でもある。

 

「十和田十景」の6曲目の「コミュニティセンターのドルチェ」の譜面を書く。この曲は、既にできてたので、譜面を書くだけ。続いて、7曲目の「流木と絵本」を作曲。録音を聞いて、即興の中で出てきたフレーズを書き起こし、それらをちょっとアレンジしていく。できるだけ弾きやすいやさしい曲にしたいので、左手をシンプルに。

 

ということで、作曲はここまで。明日からフランスなので、大急ぎで準備をいろいろ。