野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

直感について

今日は、京都から十和田に移動。地下鉄で隣に座った人が、スポーツか何かの本を読んでいて、そこに「直感に頼るな」と書いてあるのが、偶然、目に入った。

 

ぼくは、直感で判断していることが、結構多い方だ。即興演奏の場合は、じっくり考え込む時間の猶予がないので、どうしても、瞬間で判断しなければならない。その時は、瞬時の直感力に頼ることが多くなる。また、限られた時間内で作曲する時も、直感は重要な役割を担う。短い時間でワークショップで創作していく時も、直感で判断していることが多い。その結果、決断するスピードが速い。最近は、敢えて短い時間で次々に作曲しているが、これも直感力をフル稼働させようとしているからだ。

 

今までの様々な経験で自分の直感力を鍛えてきたし、直感の判断を誤っているとは思わないが、同時に、隣の人が読んでいた本の「直感に頼るな」も、もっともだと思う。直感だけに頼っていると、時に無自覚に保守的になってしまうこともあり得る。もっと別の可能性があるのに、無自覚に慣れ親しんだ道に行っていることもあるかもしれない。

 

そう考えると、直感を信用して直感に頼らざるを得ない場面は多いとしても、その直感がどうであったかを、評価/批評する場をもって、チェックしていくことは、必要なのだと思う。自分の音楽は、本当にそれでいいのか?保守的になっていないか?直感での判断は誤っていないか?別の可能性はないのか?

 

だから、音楽に対して、音楽学があったり、芸術に対して芸術学があったり、芸術批評があったりする。芸術は感性のものだから、全て感覚でというだけでなく、言葉で答える作業から見えてくることは、たくさんあると思う。批評してくれる人の存在は非常に重要で、自分がやっていることの意味を、言葉で質問してくれる人の存在も重要だ。

 

と脳内で自問自答していたら、隣の人は地下鉄を降り、ぼくも新幹線に乗り換え、気がつくと、車内でウトウト眠り、さらに新幹線で北上し、十和田に着き、十和田市現代美術館の人々と芋煮会の集いで楽しく交流した。