野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

バイバイ香港

本日、帰国。

千人の入所者がいて、千人の通所利用者がいて、千人の職員がいるJCRCでは、別れの言葉を言うだけで大変だ。朝からベリーニに連れ回されて、運転手の方々、キッチンの方々、掃除の方々、セラピーの方々、事務の方々、大工の方々、売店の方々、などなど、色々なところへ行っては、「帰ります。お世話になりました。また、会いましょう。」と広東語で言う、という別れの挨拶を、何十回と繰り返す。

あと、スーツケースの重さを量ってもらうために、高齢者の施設に行く。寝ている人や足の不自由な人の体重を量る装置で、スーツケースを量ってもらう。貴重な経験。そして、明らかに重量オーバーなので、オーバー分を手荷物にすることになり、手荷物をうまく一つにまとめてごまかせるようにするための画策を、i-dArtの女子たちが総力でやってくれる。ベリーニが、女子というのは、最も強力な動物なのだ、とか言って、まかせてあなたはリラックスしてなさい、と言われる。はい。

で、みんなでランチを食べて、最後の言葉を言うことになり、その後、記念撮影。今日、一体、何度記念撮影しただろう?それぞれの人は一回なんだけど、ぼくは全部だからなーー。

で、荷造りも完了し、記念撮影も終わり、いつの間にか、i-dArtのメンバーから、思い出のアルバムが作成されていて、最後のお土産が手渡される。今、開けなくていいから、飛行機の中で泣きなさい、と渡される。思い出とメッセージが、詰まったアルバム。

ベリーニは最後まで、一緒に写真をとろうとかせずに、ぼくの世話をして、あんまり何も言わなかった。多分、言葉にすることでもないし、言いたいことは分かるから、言葉は要らない感じだ。何にしても繊細で勘のいい人だ。「昨夜は、一晩中、夢の中で踊り続けたので、疲れた。眠い。」とベリーニは言っていた。なんで、そんなに踊るんだ、君は。

JCRCを後にし、香港の見慣れて風景も見納め。この高層ビル街も、海も、人々も、山々も、しばらくは見ることないんだなぁ。不思議な気分。飛行機に乗り、幸い、ぼくの席のモニターが壊れていたので、映画などを見る選択肢がなくなり、思う存分、眠る。そして、アルバムの中の写真やメッセージを何度も見返しながら、香港の3ヶ月を思い出す。

そして、日本に到着。日本の建物は低く、空が広い。自宅につくと、畳の匂いがする。そして、色々なものが低い。地震の被害はほとんどなく、棚からCDが少しだけ落ちていた。