野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

全員集合

香港滞在も残り1日。明日には、出国します。

今日は、i-dArtのスタッフ達とのお別れパーティーなので、少しだけ日本食をつくることに。八百屋に買い物に行って、きゅうりを買って、梅干しをたたいて、梅たたききゅうり。あと、野菜たっぷり味噌汁に、八戸のせんべい汁のせんべいを入れて、名古屋と八戸の合作。

と料理をしていると、i-dArtのメンバーが呼びに来て、ランチを一緒に食べないか、と誘ってくれる。ここでランチを食べるのも、今日と明日だけ。みんなとランチ。

そして、午後3時頃に、リオが呼びに来て、お別れパーティーの会場に連れて行かれる。i-dArtのスタッフだけだと10人ちょっとなのに、どうしてホールでやるんだろう?

ホールに行き、扉を開けると、これまで関わったメンバーが全員ではないけれども、ほぼ全員集まっていて、驚く。みんなの大歓声で迎え入れられ、ぼくの驚き戸惑う表情に、ベリーニは嬉しそう。昨日、あれだけの大イベントをしていながら、よく今日、これを準備したなー。

みんなを前に挨拶を。ベリーニに通訳してもらう。また、来年には戻ってくることを約束し、みんなへの感謝の気持ちを伝える。ぼくがいなくなっても、音楽を続けてくれることをお願いする。

その後、感謝の気持ちで鍵ハモの演奏を求められるので、演奏を始めると、ノリノリちゃんが、やって来て、ボトルとバチを手渡してくるので、鍵ハモからボトル演奏にうつる。すぐに、爆発ピアノ君も立ち上がり、中国太鼓を叩き始める。セッションタイムに。「木々の音楽」の木魚さんも出てきて太鼓を叩いている。すっかり、みんなミュージシャンになったものだ。

スクリーンには、先週のツアーコンサートの抜粋映像が流れている。仮編集とは言え、いつ編集したの?今朝でしょ?日曜日に終わって、月曜日は、最後のイベントに向けての準備でてんてこ舞いだったはず。そして、火曜日(昨日)は、本当に大イベントだった。なのに、君たちは、今朝からぼくのお別れ会のために、こんなに頑張ってくれちゃったのね。

そして、それぞれのグループと最後の挨拶。そして、グループごとに記念撮影。それぞれから手作りの記念品をいただく。グループごとの個性が出ている。ベリーニによれば、たった二日前に、各施設にメールで参加の打診をした。直前の連絡だったから、スタッフのアレンジ、スケジュールの調整などが大変なので、多くは参加しないだろうと思っていたが、どこも快諾して参加してくれたそうだ。ありがたいことです。

爆発ピアノ君は、マイクを握りしめて、ぼくに向かって、何かを語っている。これは、訳してもらった方がいいと思って、彼の施設の施設長に聞くと、「彼は多分、日本語を喋っている。私達には、意味が分からない。」と言われる。記念写真の撮影だが、爆発ピアノ君は、抱きつくだけでなく、ぼくのほっぺに、何度もキスをしてくる。カメラの方を見て、と言っても、通じるわけがない。

QQQ(静かな五重奏)のメンバーは、静かにそこに座っていた。いつもは歩き回るウォーキングマンも座っているし、うつ伏せに寝てしまう人も起きている。やっぱり、あれは限りなく日常に近いパフォーマンスで、演じていないようで演じていたのかもしれない。

「ドラムカーニバル」のバンドリーダーから、片言の日本語で挨拶。ノリノリちゃんは、ぼくの胸の鼓動をいつものように聞いている。あの世に旅立たれたゲラゲラ木琴さんのことも思う。いいバンドだったなぁ。

高齢者の方々は、一人ずつから短いお言葉をいただく。出会いは一期一会。来年帰って来る時まで、元気でいていただけたらいいな、とは思う。

「車椅子四重奏」は、さすがに4人をホールに連れてくるのは難しかったのだろう。施設職員の数が少ないから。施設長のみが来て、挨拶。

陶芸クラスのメンバーも参加。ここは、楽器を作っていただいたけれども、直接の関わりは少なかったので、映像で陶芸楽器の音色を聞いてもらえてよかった。

「アフロブラジリアン・ビッグバンド」もいる。マコトバンドに参加したカホン担当さんが挨拶してくれる。トラム、ツアーコンサート、昨日のイベントとフルに参加した彼女は、特に思いも強いだろう。

「ピアノコンチェルト」のメンバー。マコトバンドに参加したメンバーが複数いる。様々な場面の写真が、寄せ書きに貼られている。

「キッチンミュージック」のメンバーからは、衣装や寄せ書き、手作りコースターなど。

美術クラスやダンスクラスのメンバーと、記念写真。

最後は、メキシカに連れられて、舞台の上にあがると、YouTubeで炭坑節が流れ、みんなで炭坑節を踊って終了。舞台の上から、バイバイと手を振る。メキシカが、舞台からおりないで、と耳打ちする。みんな、手を振りながら、ホールから退出して行くが、ノリノリちゃんは、帰らずに、舞台に寄ってくる。爆発ピアノ君は、施設長に羽交い締めにされて、退出させられそうになりながら、それを振り切って、舞台の下までやって来て、舞台から降りてくるように叫んでいる。メキシカが、何か言っている。もう舞台からはおりれない、と言ったのだろう。爆発ピアノ君は、舞台の下から目一杯の抱擁とキスをして、施設長に連れ去られるが、それでも必死になって叫び続けていた。それは、「元気でね」と言っているのか、「帰ってこい」と言っているのか、分からなかったけれども、意味ではなく、必死さだけが伝わってきた。ノリノリちゃんは、投げキスをくれて、連れ去られて行った。彼ら/彼女らが、自由に音楽が表現できる場が、今後も継続することを祈る。

その後は、町に出て、ショッピング。ベリーニの指示で、i-dArtのスタッフのヘイアンが同行。おかげで、買い物はスムーズに。途中で、漢方系のお茶の店で、最も苦いと言われる廿四茶を飲む。苦かった。ヘイアンに日本語を少し教える。彼女は、日本語を習い始めて、一回目のレッスンが終わったところらしい。

その後、i-dArtのメンバーとの最後の晩餐。全員集合。リオを除くと全員女子。普段の職場とは違って、休日モードで、みんなでお喋りが続く。3ヶ月前は、ベリーニ以外は誰も知らなかったのになぁ。

香港の3ヶ月の滞在もこれで終了する。最後のシャワー、最後の歯磨きをすませ、最後の夜を、香港と日本を思いながら、リラックスして過ごし、最後の就寝。