野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

先入観とラベリングの「點心組曲」

朝は、9月4日の中川賢一さんとの2台ピアノコンサート「オリヴィエ・メシアンに注ぐ20のまなざし」に向けて、メシアン作曲「アーメンの幻影」の譜面を読んでおりました。最終曲の譜面に、第1ピアノは、カリヨンと書いてあるので、教会の鐘のイメージとして、第2ピアノは、cuivre,sonoreと書いてあり、これは、銅の音ってことは、ガムランかな。つまり、鐘とガムランの共演の音楽か、と思って、譜面を見る。メシアンは、20世紀のフランスの作曲家なので、教会の鐘の響きはよく知っていて、ガムランはあんまり知らない。だから、鐘の方は非常に鐘っぽい響きで、ガムランは全然ガムランじゃない。メシアンよりはガムランをよく知っている野村は、この曲をどう弾くのだろう?そんなことを思いながら譜読みをする。

「點心組曲」第16楽章「キッチンミュージック」の6回目。いよいよ、最後から2回目のセッション。7月5日の本番を想定して、出演者の確定と楽器(鍋やフライパン)の担当の確定。誰がどのバチを使うかの確定など、そうしたことが中心でした。いい響きの音楽であります。

その後、7月2日のトラムでの演奏会で使う楽器の確定のためのミーティング。少ないスペース、揺れる車内で、安全性と音楽性の狭間でのせめぎ合い。

午後は、「點心組曲」第11楽章「Afro-Brazilian Big Band」の7回目。今日は、アフリカンで始まり、途中はブラジリアンだった。

その後、明日の講習会の準備。そして、ベリーニに帰国のフライトをとってもらう。帰国の準備を始めると、寂しい気持ちになる。

夜は、小日山さんと町に出かけ、夕食。語っていて気づいたが、この「點心組曲」でやっていることは、人々に接する上で、人々を先入観なしにニュートラルに見るのではなく、ラベリングをし、先入観を持って、それらの人々に接しているということ。もちろん、その先入観が違ったら、ラベリングを変える、という作業はしましたが。勝手に、「アフロ・ブラジリアン」とかネーミングして。ニュートラルな視点ではない。「静かな五重奏」とかも、勝手に「静か」と決めつけている。でも、こういうことを通して、なんとかコミュニケーションを深められないかと、試行錯誤をしたのではありました。

その後の即興散歩で、香港の町を堪能。たまたまよった文化中心で、中国音楽のCDや本を購入。またフェリーにも乗り、夜景も楽しみました。