野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

オルガンと話してみたら

今日より、一瞬だけ東京へ。「オルガンと話してみたら 新しい風を求めて」というコンサートで、野村誠作曲「オルガンスープ」(2005)が再演になるのです。東京藝術大学のマネジメント専攻の大学院生とオルガン専攻の大学院生の共同企画で、日本でパイプオルガンの音楽をすることの意味を、考えてみようという意欲的なコンサートなのです。バッハとか、クラシックなんて、全然演奏されない、6曲全部、日本人が作曲したオルガン曲。演奏が、東京藝大の大学院生。それに、尺八やら、和太鼓などが演奏で加わる。和太鼓には、第一人者の林英哲さんも出演するのです。ぼくの「オルガンスープ」を演奏してくれる阿部翠さんからは、昨日の野村の「みそラーメン食べ放題」を練習していて、あまりの美しさに、リハーサル中に泣きそうになった、と嬉しいメールも来て、ますます、自分が作曲したオルガン作品と13年ぶりに再会できることに、本当にワクワクする。

上野について、まずは、インタビュー。「千住だじゃれ音楽祭」について語る。野村が中心となり7年続いているプロジェクト。8年目に入るが、当初と違って、徐々に、参加しているメンバーが自発的に活動し、各自の個性や能力が開花し、野村が不在でもプロジェクトが展開している。愛すべきプロジェクト。

その後、東京藝術大学奏楽堂へ。1,000席近いホールであるが、ほぼ満席。ぼくは招待席に通される。音楽評論家、作曲家、美術評論家、編集者、ピアニスト、ダンサーなどの知り合いに次々と会う。また、千住だじゃれ音楽祭のメンバーにも何人か会った。作曲家の権代敦彦さんと、本当に久しぶりの再会。そして、権代さんの作品が、非常にシンプルな切り口でありながら、単なるコンセプトに留まらない音響的な魅力に満ちあふれた作品で、聞き入ってしまう。ぼくの出身高校である旭丘高校の先輩でもある新実徳英さんの和太鼓とオルガンの作品も、素晴らしいエネルギーでの演奏。高校の大先輩にご挨拶する機会も得られて、大変嬉しい。野村の「オルガンスープ」が奏楽堂のオルガンで鳴り響く。ああ懐かしい曲との再会でありながら、初めて聴く解釈、初めて聴く音色でもあるので、もちろん、新鮮な出会いでもある。「みそラーメン食べ放題」は、やはり美しく鳴り響き、神々しく微笑む。神様が絶対的な力を示した時代の教会音楽としてのオルガンとは違い、いたずらっぽく神様が微笑んでくれる庶民的な愛に満ちあふれた神様が描かれていて、阿部翠さんの演奏が会場の空気を鎮めていく。

皆さん、本当にお疲れさま。無料のコンサートとは言え、800人もの来場者があり、その中には、オルガンを初めて聴いた人も多数いただろうし、現代音楽を初めて聴いた人もいただろう。コンサートのご成功おめでとう。打ち上げで、権代さんや新実さんと話せたこと、阿部さん、企画の山下君、演出の小野くんらと話せたことも、嬉しいことでした。

深夜、木方さんのお宅で少し、コンサートのことを語った後、明日の「徹夜の音楽会」に向けて、就寝。