野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

熊本県立図書館に行ってみた/千原真実展

熊本県立図書館へ出かけた。色々な本を読んだりして過ごし、貸出カードも作った。一般社団法人日本オルガニスト協会が監修で松居直美・廣野嗣雄・馬淵久夫編著の「オルガンの芸術 歴史・楽器・奏法」(道和書院)という本を見つけ、読み始める。本来、(パイプ)オルガンの新曲を書くことになった時点で、こうした本を読み研究し、オルガンのコンサートに出かけて研究すべきところなのに、作曲に着手してから1ヶ月経った今頃に、この本を図書館で見つけて読んでいる自分ってなんだ?順序がおかしい。でも、作曲していくと、楽器について疑問点が出てきて、いろいろ質問したくなってきているので、今だからこそ、この本がありがたい。それにしても、16年前に《オルガンスープ》を作曲した時には、オルガンに詳しかったはずなのに、16年経って、当時勉強した知識がほとんど白紙に戻っていて、自分の忘却力に驚く。最後の章が日本の「オルガン作品」という章で、ここも読むと参考になるかも、どんな作曲家がどんな作品を書いているのだろう、と思って読んでいたら、東京藝術大学奏楽堂でのコンサートのことが出てきて、野村誠《オルガンスープ》が出てきて、年表にも野村誠がのっててびっくりした。現在作曲中の《たいようオルガン》も、いずれオルガン界の古典的なレパートリーとなって、歴史の1ページになる日も来るのかもしれない。

 

熊本県立劇場の情報誌を見つけて開いたら、ピアニストの中川賢一さんが特集されていた。中川さんは全国各地で活発に活動されているなぁ。11月14日には、つなぎ美術館でアートx音楽の企画もされるらしい。でも、その日は、ぼくは東京で大田智美さんのコンサートに行くのだ。全曲、野村誠作曲のアコーディオン作品でのコンサート。昨年、アコーディオンとピアノのための野村作品は全部まとめて演奏して、今回は、それ以外らしいのだが、それだけでは収まりきらないらしい。アコーディオンの曲、相当たくさん作曲しているのだ。

 

里村さんと熊本市現代美術館に行った。今日は、時間がなかったので、「テオ・ヤンセン展」は次回にして、千原真実個展「風景、片鱗」を見る。美術家の友人たちから聞きかじった知識では、シュポール/シュルファス(support/surface)という動きが、昔あって、枠を作って、そこに布を張ってできるのがキャンバスなのに、キャンバスが枠から脱出して、布として広がっていき、平面絵画が不定形な空間構成になっていく。本日の千原作品は、それとも近くて、キャンバスの上にキャンバスの切れ端がコラージュして貼られていたり、パネルの外の壁も四角く塗られていて、どこが画面なのか、どこが枠なのかがわからない、限りなく平面に近い立体作品だった。シュポール/シュルファスの作品が、ほとんど枠を解体していくのとは違って、千原作品は、四角い枠がある。四角い枠があることで、味わえる。でも、その枠の作り方が絶妙で、複数の枠が多層的に重なっていたり、キャンバスの上にキャンバスを貼ったり、パネルの四角と同じ色で、壁が四角く塗られていたりする。余白がいっぱいあるのもいいし、同じ手法でも、色々な色彩や素材を試して、数々の試行錯誤の跡が味わえるのもよかった。音楽の楽譜のようでもあった。

 

美術館内の図書館は魅力的な蔵書が並び、中央にジェームス・タレルの作品があったりして、その空間にはグランドピアノもあった。こんなところで、演奏会が聞けるのもいいな。書棚の中に、ぼくの本「音楽の未来を作曲する」も置いてあるのを発見する。素直に嬉しい。

 

あ、今日は七夕か。