野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

作曲後、東京へ

朝目が覚めたと思ってら昼だった。11時間眠ったようだ。やはり、疲れていたのか。

朝食を軽くとり、昨日書いた譜面「Tradition - Extra Addition」のパート譜の校正をする。校正は意外に時間がかかる。その後、前回の「世界のしょうないワークショップ」の内容に基づいて、「アリとキリギリス」という簡単な譜面を書く。クラリネットトロンボーン、ピアノ、ヴァイオリン、コントラバス。これらの曲は、明日(12月1日)に大阪で行うワークショップで、日本センチュリー交響楽団のメンバー、そして、本日来日する予定のマンチェスター・カメラータのメンバー、大阪音大の邦楽の先生方と演奏する。ワークショップのために新曲の譜面を次々に書いて、どんどん初見で演奏する、というやり方を、今年から始めた。ハイドンやバッハの作曲ペースを見ていると、こんな感じだったのかな、と思うので、意識的にやっている。これらの譜面を送って後、東京遠征の準備。2005年作曲の「オルガンスープ」と1995年作曲の「でしでしでし」の譜面を探し出し、それぞれの音源を探す。そうしたら、もう東京に出かける時間なので、自宅を出発。

東京藝術大学の千住キャンパスにて。2月4日に開催する「千住だじゃれ音楽祭 第2回定期演奏会 かげきな影絵オペラ」に向けて、本日は、影絵アーティストの川村亘平斎さん、箏曲家の竹澤悦子さんも来て下さる。影絵と音楽の絡み方の可能性など、即興と決まっているところの感じなど、いろいろ、相談する。

深夜、東京藝大院生の山ちゃんにインタビューを受ける。彼の企画で、2005年作曲の「オルガンスープ」(全7曲)が来年3月30日に、オルガン科の大学院生により再演されることに。演奏されることは、本当に嬉しい。深夜まで語り、オルガンについてのみならず、作曲家の譜面を収集してアーカイブしている楽譜図書館/資料館のようなところはないのか、と美術家の友政さんに聞かれて、唖然とする。何せ、野村作曲の譜面の多くは、未出版であり、それらの楽譜は野村個人で管理しているが、そうした楽譜を見たければ、図書館などでは無理で、野村に直接連絡するしかない。今回の企画で、山ちゃんが日本の作曲家によるオルガン曲の譜面を集める際、ほとんどが未出版なので、直接作曲家にあたるのだが、ある作曲家は、譜面を紛失していて、持っていない作品があったそうだ。アメリ実験音楽の作曲家ヘンリー・カウエルの伝記を読んでいたら、カウエルは1930年代に70曲ほどの作品を作曲していて、そのうち20%ほどが、現存しないらしい。「I Fanati」という舞台作品が、カウエルの最も影響力のある作品だった、と作曲家のルー・ハリソンが言っていて、その作品も、失われてしまった。17世紀とか18世紀の音楽とかではなくって、20世紀の音楽で、それだから驚愕です。しかし、野村の作品の譜面を見たい、と言ってきた批評家や研究者は全くいないし、楽譜を一括管理する資料館をつくるので、一部、寄贈して下さい、などと言われたこともない。そんなことを、色々と考えさせられました。深夜4時まで話し込んでしまった。それから、お風呂に入って、寝ました。