野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

マルセイユ公演

マルセイユの演劇学校ERACMでの集中講義マスタークラスの5日目。本日は、音楽のワークショップを長めにやりまして、野村は「しょうぎ作曲」をやったり、「関西電気保安協会」や「引越のサカイ」の歌を一回だけ歌って聴かせて、聴き間違いで新しい言語で新しいメロディーができるのをやりました。フランス人にとって、日本語はこんな風に聞こえているのですね。

夜は、日本人4人によるパフォーマンス

1)きたまりソロダン
2)森川弘和ソロダン
3)野村誠+やぶくみこデュオ(鍵ハモ+ダルブッカ)
4)やぶくみこソロ(グンデル)
5)野村誠ソロ(ピアノ)
6)野村誠+やぶくみこ(鍵ハモ+グンデル)
7)野村誠+やぶくみこ(ピアノ+グンデル)

きたまりさんのソロダンス作品は、昨年12月にFour Dancersで初演されたベートーヴェンの第9の2楽章への振付作品で、途中土俵入りのように腰を割るところもあり、しかし、猛烈にハードに動く熱演であり、衣装に特殊な仕掛けもあり、見応え十分の作品。上演後、観客の中でスタンディングオベーション。森川さんのソロダンスは、逆に、非常にストイックな電子音響を背後に、物体としての身体が、動いていく。それは、何か自然現象を眺めているかのようでもある。感情のある生命の動きではなく、身体ではなく、物体とか現象。雲の動きを眺めるとか、波の動きを眺めるとか、そうした感覚に近く、たった8分の間に永劫の時間が流れた。やぶくみこさんと野村によるデュオ即興で幕開け。鍵ハモ+ダルブッカで勢い良く始まり、身体的な運動も盛り込んでの演奏。やぶさんのグンデルソロは、逆に、感覚を研ぎすまされ、人々の感覚が開いていく。その後、野村は、10年前に振付家白井剛さんと作った「Physical Pianist」を10年ぶりに、簡易版で再演。様々な動きが盛り込まれた作品。やぶさんの小品の新曲「はとの鳴く庭」を演奏して後、ピアノとグンデルで即興演奏を試みた。学生たちに伝えたいこと、この1週間で伝え足りなかったことを、即興の中にできるだけ盛り込んでの演奏。

終演後も、お客さんや学生達が残ってのロビーでの簡易立食パーティーで、延々と語り合う場ができたことも、公演の成功を物語っておりました。ぼく自身も、皆さんの素晴らしきソロを満喫し、大いに刺激を受けました。この公演、日本や他のところでも、やっても面白いと思う。