野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ディディエは独学で演出家になった

昨日、マルセイユでの公演が終わり、日本人の他のアーティスト(きたまり、森川弘和、やぶくみこ)は、明日、マルセイユを発つので、本日が唯一のオフ(やぶさんは、スウェーデンに別の仕事で飛び、他の二人は帰国)。

ぼくは、昨日から風邪で体調が芳しくないのですが、せっかくなので、皆さんと出かけました。ディディエさんお薦めのチーズ屋さんは、さすがの品揃えとクオリティ。ディディエの青春時代の思い出のピザ屋にて昼食後、ニホさんとヴァンシアンヌが営む「たこさん」というたこ焼き屋を訪ねました。10年前にお二人にマルセイユでお会いした時には、たこ焼きをつくった経験すらなかった二人の俳優が、研究を重ねて、南仏の地でこのような楽園を営んで来られたことに、敬服。日本にもフランスにも決して二つとないユニークな店でありながら、居心地がよく、そして美味しく楽しい。マルセイユ名物の石鹸を求めて石鹼屋さんに行って後、海辺のビューポートを楽しみ、観光客のようにアイスクリームも食べました。

夜は、やぶさんの鴨料理で最後のディナー。ディディエが、どのように演出家になったかも、こうしたディナーの場での会話から分かりました。彼は、仮面劇の俳優として訓練を受けていたのですが、演出は独学なのです。今から20年ほど前に、日本(京都)に能楽を勉強に来ました。3ヶ月ほど学ぶと、これ以上、極めていこうとすると、日本で何十年と修行しなければいけない、しかし、自分は能以外の様々な演劇にも興味があり、能だけに専念するわけにはいかない、とディディエは考えます。そこで、それ以上のお稽古をストップしたのです。日本での滞在期間の残りを、能を勉強する代わりに違うことをしようと考えて、自分のソロの作品をつくった、これが初演出作品なんだそうです。だから、ディディエは、日本で演出を始めたのです。