野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

新曲2曲世界初演!世界のしょうない大盛況!

本日は、「世界のしょうない音楽祭」。4年前に、日本センチュリー交響楽団が新設したコミュニティ・プログラム・ディレクターに就任しました。それ以来、就労支援NPOとの「The Work」というプロジェクトと、豊中市と連携した音楽プロジェクト「世界のしょうない音楽祭」を行って参りました。というのは、センチュリー響は、豊中市に本拠地があるのです。地元のNPOしょうないREK、大阪音大の協力を得て、プロジェクトは広がりを見せ、今年は、豊中市立文化芸術センター大ホールで開催することになりました。

で、ぼくは、昨年イギリスの電車内でスーツケースを盗難にあい、衣装もいくつか盗まれてしまいました。旅行保険で現金となって返ってきたものの、そのお金を使ってシャツを買わないと、シャツもないのですが、今日の本番で着るために買うならば今しかない、ということで、衣装を買いに出かけました。2着買ったので、19日の竹澤悦子さん、沢井一恵さんとのコンサートの衣装もできました。

ということで、豊中市立文化芸術センターに向かいます。既に会場ロビーには、しょうないREKによる展示もあります。野村の新曲「ルー・ハリソンへのオマージュ」のリハーサルも、ヴァイオリンの巖埼友美さんとギータクンチャナのバリガムランにより素晴らしい演奏で仕上がってきていて、本番がますます楽しみになります。その後、ワークショップ参加者を含めた全メンバー61名により、「越後獅子コンチェルト」の通し稽古をする前に、登場の仕方、チューニングの仕方、退場の仕方、などなどを確認して後、通し稽古。子どもたちは、言葉とか完璧に覚えていて、凄いなぁ。色んなサウンドがなんとも愛おしく、もっと何度も聴きたいのに、一回しかリハーサルはできません。気がつくと、もう開場時間です。

オープニングアクトのタチョナの子どもワークショップの発表を聴きに行きたいのですが、本番前に、司会の打ち合わせなどをしなければならず、全く無理でした。残念で仕方がありません。

さて、「世界のしょうない音楽祭」会場には、八代亜紀コンサートか、と思うような大行列ができていた、とのことで、多くのお客様にご来場いただき、本当に感謝です。田中峰彦さんの作品2曲、野村誠の作品2曲、そして、地歌の古典一曲、というプログラムで、かなりマニアックな選曲だと思いますが、このユニークなプログラムに500人以上の観客が集まるところに、豊中の文化度の高さがうかがえます。これまで、皆さんが取り組んでこられたことが、着実に成果をあげている、と実感できます。

楽屋では、徐々に皆さんが本番の衣装に変わっていき、色々な個性があり、不統一でありながら、繋がっていて、個々に記念撮影をとり、交流し、そうしているうちに、本番がやってきます。ぼくは、大阪音大教授の井口淳子さんとともに司会を務めましたので、舞台袖から鑑賞しておりましたが、第1部を通して、庄内にこんなに多彩な才能ある音楽家がいることに、感銘を受けました。シタール、箏、ガムラン、ヴァイオリン、三味線、いやぁー、どれも素晴らしい力量と音楽性の持ち主で、しかし、通常交わることのない方々が、こうして次々に舞台にあがられる。こんな希有な機会に立ち合わせていただいていること自体が幸福に思います。そして、ヴァイオリンとバリガムランの作品を書かせていただき、かくも素晴らしき音楽家の方々が真摯に取り組んで下さることにも、本当に幸せに思います。

そして、これらの演奏家全員が参加し、さらに、ヴィオラ・ダ・ガンバも加わり、そして、50人のワークショップ参加者も加わって、野村の新曲「越後獅子コンチェルト」をやりました。これは、30分の曲で、4楽章と言っているものの、アタッカ(全部つながっている)なので、ある意味、一続きの30分の曲です。こんな長い曲ですが、演奏者からも観客からも、あっという間に終わって30分もあったなんて思わなかった、と感想をいただいたのですが、本当に、あっという間に、気がつくと、終わりを迎えていました。この作品を再演することはあるのでしょうか?あったとしても、この同じメンバーで同じように演奏することは、決して二度とないに違いありません。そういう時間を、ともに生きた30分が終わっていく寂しさもあり、最後まで大きな事故も起きずに演奏できたという達成感や喜びがあり、本当に地歌の歌詞のように、「夢に見て候」でありました。

そして、終演後の楽屋で帰り際に、今日は菊武厚詞先生のお誕生日であることを知り、もっと早く知っていれば、曲の中にサプライズで盛り込むか、何か演出するか、できたかもしれませんが、もう本番も終わり、皆さんもお帰りになった後のまつり。お誕生日おめでとうございました。

出演の皆さん、関係者の皆さん、本当に本当に本当に、ありがとうございました。また、再会できること、楽しみにしております。

ということで、明朝から遠征になるので、荷造りをしなければいけません。深夜に帰宅後、荷造りをし始めますが、これが厄介で、コンサートで使うもの、ワークショップで使うもの、講座で使うもの、そして、衣服など、結構、複雑。もう、途中で諦め、続きは明朝と目覚ましをセットして、就寝。